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弁護士が見たiPS研究(その2) 「倫理」の問題を真正面から議論すべきだ

中村多美子 弁護士(家族法、「科学と法」)

ELSI(エルシー)とは、「倫理的・法的・社会的課題」の英語の頭文字をとった言葉だ。新しい科学技術や医療技術を取り入れる際、ELSIの検討が不可欠だと言われている。iPS細胞研究が可能にするとされる再生医療・移植医療の分野では、今後、世界各国で様々な応用研究が行われるだろう。当初予想もしなかった、倫理的、法的、社会的な問題が立ち現れてくることも想像に難くない。

 日本でELSIというキーワードがよく聞かれるようになったのは、平成16年度科学技術白書で取り上げられてからだと思う。私が、このキーワードに出くわすたびに思うのは、「法」と「倫理」とはどのように区別しているのだろうかという点である。私も、「法」という言葉を使っているものの、「法」を定義することは、実は簡単ではない。「岩波哲学・思想辞典」の「法」をひいてみると、のっけから、「法学者は未だに法の定義を求めている(カント)」と書いてあるくらいである。ちなみに、「倫理」はというと、「倫理学」という項目名で「人間のよい生き方を問い、それを吟味する学」とされている。

 ELSIについて、法律家が「倫理」についても語ると期待されているように感じることがあるが、実は、法律家は、倫理学が求めるような「よい生き方」、もしくは「よき社会、よき文明」のような問いについては、シニカルな態度を持っているように思う。

 科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)のあるプロジェクトで、

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筆者

中村多美子

中村多美子(なかむら・たみこ) 弁護士(家族法、「科学と法」)

弁護士(大分県弁護士会)。1989年京都大学農学部入学、翌年法学部に転入学。95年司法試験合格。京都大学博士(法学)。関心領域は、家族法や子どもの権利、そして「科学と法」。09年度から始まった科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センターの「不確実な科学的状況での法的意思決定」プロジェクト代表を務めた。日弁連家事法制委員会委員、大分県土地収用委員会会長、原 子力発電環境整備機構評議員。【2017年3月WEBRONZA退任】

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