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放射能拡散予測で「複合事故」の怖さを知る

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 原子力規制委員会の放射性物質拡散シミュレーションが公表された。地形などが考慮されていないことやいろいろな誤りを含んでいることなどの問題はあるが、このような資料が公開されたことは評価できる。私も、このWEBRONZAで全原発の放射能拡散予測を公開し、それを参考に事故時の対応策を検討するべきだと主張してきた。次は、このモデルの精緻化とそれに伴う対策の立案と実施が重要になる。

 しかし、この予測結果が公表されたという報道を聞いて、原子力規制委員会のホームページを開いても、それがどこにあるかがわからない。これだけ大きな関心事なのだから、当然、トップページからリンクが張られていると思ったのだがそうではない。トップページには何も触れられていない。

 こちらも国の役所の発想はわかるので、細かく探していくと、見つけたのは第8回原子力規制委員会の会議資料の中である。

 もちろん、これは会議資料なので、隠しているわけではない。あるべきところにある。しかし、多くの国民が興味をもつであろうという資料なのだから、本当に国民との対話を考えるなら、トップページから直行できるようにすべきだろう(もちろん、これを当局に質問すれば、どうして会議資料のなかに置いたかの理由が滔々と述べられるであろうことはわかっている。どんな理由が展開されるかも想像がつく)。

 ただ、今は、できるだけの情報を開示し、それを国民に提供をすることが非常に重要である(適切に開示されていないと言っているのではない。親切ではないなと感じているのである)。このような感覚のギャップが積み重なって、不信感につながっていくことは、原子力当局がもっと敏感になるべきことがらであろう。目線が細かいところから国民と一致しなければ、再稼働への道は厳しいと言わざるを得ない。

 さて、拡散シミュレーションの中身であるが、私が真っ先に見たのは、若狭湾原発群のシミュレーションである。

 ここでは、高浜、大飯、美浜、敦賀の四つの原発群のシミュレーション結果を組み合わせて表示してみた。

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