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山中伸弥さんが2006年にマウスの皮膚細胞からiPS細胞作成に成功して以来、日本社会ではiPSフィーバーがまきおこった。ことし山中さんにノーベル賞生理学・医学賞が与えられることで、フィーバーはさらに加速し、いまや日本はiPSセントリック(iPS中心主義)な社会にまっしぐらである。

 もちろん、日本発の研究で初めて日本人にノーベル生理学・医学賞が授与されることはとても喜ばしいし、筆者もひとりの日本人として誇りに思う。しかし、同時に強い危惧も覚える。日本中がiPSのノーベル賞受賞で盛り上がっているときに大変申し訳ないとは思いつつ、このままiPSセントリックな状況が続くと日本の科学技術また医療産業は大変なことになると考えているので、ここで筆者の考えを読者と共有させて頂きたい。

持続的発展ができなくなる一点集中主義

 現代の日本は戦後の「世界に追いつけ追い越せムード」の右肩上がりの社会ではない。そのような社会は「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」のごとく崩壊した。今は「持続的な発展」が求められている。それには、新しい革新的な科学技術が次々と生まれ、それらをもとに新たな産業が創出され、それにより我々の生活の質が持続的に向上する必要がある。つまり、「一攫千金の戦略」は通用しない。

 このような時代にiPS一辺倒ともとられかねない国からの支援状況は問題である。このような政策は、次世代の医療革命をもたらすような研究の芽が育ちにくい研究環境をつくりあげてしまう。仮にiPS細胞による医療産業がポシャった時に次の候補がゼロという状況になりかねない。

 科学の発展の基本は

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筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

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