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やっかいな放射線と向き合って暮らしていくために

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

学習院大学理学部物理学科の田崎晴明教授が書いた「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」の書評が、11月11日の朝日新聞と読売新聞の朝刊に出た。朝日は評論家の山形浩生氏、読売は脳研究者の池谷裕二氏の筆だ。どちらも、この本の誠実さをたたえ、すべての読者に薦めている。この本の内容は、一足先にネットで無料公開されている。実は、ネットで公開された6月、「ツイッターで評判になっている」という記事を新聞向けに書いた。ところが、残念ながら紙面に掲載されなかった。新聞は、日々、ニュース性の高い記事から掲載していくので、たまたま掲載に至らないまま結局時機を失してしまうケースは日常茶飯事である。そんな一つに過ぎないのだが、「当時載っていたら」という思いが日曜日の朝に胸の中で苦い塊になった。

 無念を晴らすために(?)、幻の記事の一部を紹介しよう。

 「普通ではない15カ月間を過ごしてきたすべての人へ」向けた173ページの本が、 http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/radbookbasic/ からダウンロードできる。原子の仕組み、放射線の健康影響、内部被曝の見積もり方などが中学生以上にわかるように解説されている。

 他の一般向け解説書と違うのは、根本的な原理から説明されていて、簡単な計算方法も示されていること。新聞などに出る空間線量率の値から、周辺の地面にセシウムが何ベクレルあるかや、そこで暮らす場合の年間被曝量が大まかに計算できる。「線量の高い地域に遠足に行く」といった場合にどれだけ余計に被曝するかの計算方法もある。それでどうするかは、自分で判断してほしいというのがこの本の立場だ。

 田崎さんは、福島原発事故が起きてから原子力や放射線について勉強し、随時自分のホームページで解説を公開してきた。「心配でたまらないお母さんから放射線のプロまで、いろんな人からいろんな指摘があって本当に勉強になった」

 そうした蓄積を元に工夫を重ね、「内容の正確さについてはかなりの自信がある」本が仕上がった。

 (以上、幻の記事の紹介終わり)

拡大田崎晴明・学習院大教授

 このときすでに複数の出版社から単行本化の申し入れがあったが、「なるべく安く、儲けを少なくしてくれるところを選ぶ」と話していた。そうして、秋になって朝日出版社(朝日新聞出版とは違う。朝日新聞とはまったく縁のない出版社である)から単行本が1050円で発売された。

 田崎さんは、統計力学が専門の理論物理学者だ。原子核については

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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)、編集委員を経て科学コーディネーターに。2021年9月に退社。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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