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【WR馬学1】やんちゃな駿馬オルフェーヴル

楠瀬良 楠瀬良

 今秋、パリのロンシャン競馬場でおこなわれた凱旋門賞に、日本の競馬ファンの期待を一身に背負ってオルフェーヴル(牡4歳)が出走した。出走時刻が日本時間ではまだ宵の口だったので、フランスからの中継をリアルタイムで見た人も多かったものと思われる。

 オルフェーヴルは最後の直線でスパートし、他馬をみるみる抜き去り先頭に立った。圧倒的な勢いでゴールに向かうオルフェーヴルの姿を見て、勝ったと思ったのは筆者だけではないだろう。ロンシャン競馬場にいた朝日新聞の有吉正徳記者は、取材も忘れて万歳を叫んだそうである。しかし結果は首差の2着。日本の競馬ファンの永年の夢は、またもやかなえられることはなかった。

 凱旋門賞での勝利は世界のホースマンにとって最大の目標の一つといえる。この競走は欧州の競馬シーズンの終盤に開催され、その年の各国の活躍馬が一堂に会する国際レースである。近代競馬発祥の地イギリスではなく、フランスで開催される凱旋門賞が世界最高峰の競馬となったのには、いくつもの理由があげられる。高額な賞金もさることながら、なんといっても過去この競走における多くの勝ち馬が、引退後優秀な種牡馬となってサラブレッド改良の歴史に大きな足跡を刻んできたことが競馬としての格を高めた最大の要因といえよう。

 このレースで勝つことは、賞金、名誉を得るばかりでなく、将来種牡馬となった時の価値(経済的な面も含めて)を飛躍的に高めるという側面をもっているのである。日本で生まれ、日本人の手で鍛えられ、日本の競馬場で才能を輝かせてきたサラブレッドが、世界のホースマンが注目する凱旋門賞を勝つということは、正真正銘、日本競馬が世界のサラブレッド種牡馬の選別の場に加わった証ともいえるのである。

オルフェーヴルの混迷
 凱旋門賞をあと一歩のところで惜敗したオルフェーヴルは、現在まで16戦9勝という素晴らしい成績をおさめている。この時期のディープインパクトの戦績12戦10勝と比較するとやや劣るように見えるが、競走馬としての潜在能力はディープインパクトに勝るとも劣らないと筆者は考えている。

 一方、競馬場でのオルフェーヴルは、エピソードに事欠かない。話題性という点ではディープインパクトをはるかに凌ぐということは万人の認めるところであろう。 ・・・ログインして読む
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筆者

楠瀬良

楠瀬良(くすのせ・りょう) 楠瀬良

【退任】日本装削蹄協会常務理事。1951年生まれ。東京大学農学部を卒業後、同大学院、群馬大学大学院を経て1982年、日本中央競馬会(JRA)に。JRA競走馬総合研究所で馬の心理学、行動学を研究し、運動科学研究室長、次長などを務めた後、2012年から現職。訳書に『新アルティメイトブック馬』(E・H・エドワーズ著、緑書房)、著書に『サラブレッドはゴール板を知っているか』(平凡社)、『サラブレッドは空も飛ぶ』(毎日新聞社)など。農学博士、獣医師。

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