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【WR馬学2】アイドル馬は社会を反映する

楠瀬良 楠瀬良

 日本で近代競馬が開始されて150年。これまで日本の競馬界は多くの名馬を生み出してきた。しかし、競馬ファン以外にも広く知られ、アイドルとも言える存在となった競走馬はそれほど多くはない。そしてアイドルホースは、なぜかその時代を反映している。

 まずはシンザン。1960年代前半に活躍した名馬。19戦15勝、勝った競馬の多くは僅差で、ゴール板を過ぎるとすぐに止まってしまう。ゆえにゴール板を知っている馬といわれた。敗戦からの復興をはたし、もはや戦後ではないとされた日本。時代は昭和のど真ん中。まさに昭和を体現している名馬といえよう。ちなみに当時、競馬場に掲げられていたキャッチフレーズは「明るく楽しい中央競馬」。なんとも素朴なコピーではあった。

 ハイセイコー。1972年、地方競馬の大井競馬でデビューし6連勝。中央競馬に移籍し、皐月賞を含めて4連勝してダービーに臨んだ。惜しくもダービーは3着に敗れたが、今でも多くの人の記憶に残っている。この馬が活躍した時代は、日本のGNPが世界2位になるなど、人々は将来は光に満ちていると感じていた。ハイセイコーは立志伝中のヒーローであり、高度経済成長期を象徴している馬ともいえる。

 オグリキャップ。この馬も地方競馬出身であることがヒーローとしての大きな要素となった点ではハイセイコーと似ている。オグリキャップをアイドルホースとして決定づけたのは、天皇賞6着、ジャパンカップ11着と破れた後の引退を期したレース、有馬記念での復活ドラマといえる。この馬が活躍したのは1987年から1990年の4年間。時あたかもバブル経済のピークであり、世の中は浮き立ち、社会の姿がオグリキャップの活躍に重なって見える。

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