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古びないクストー氏の言葉:第1回科学ジャーナリスト世界会議から20年

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

第1回科学ジャーナリスト世界会議の全体会議=報告書より

 科学ジャーナリストの第1回世界会議を国連教育科学文化機関(ユネスコ)が東京で開いたのは1992年11月、ちょうど20年前のことだった。二人が基調講演をした。フランスの地球環境研究家ジャックイブ・クストー氏とキャノン代表取締役会長の賀来龍三郎氏だ。

 「地球の未来と科学ジャーナリストの役割」について語ったクストー氏の講演記録を読み返してみると、氏の主張が今もまったく古びていないことに驚かされる。この20年、世界は何をやってきたのだろう。

 クストー氏は97年6月に87歳で亡くなった。朝日新聞に載った訃報を以下に紹介する。

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 深海を撮影したドキュメンタリー作品「沈黙の世界」や核実験反対など活発な環境保護運動で知られるフランスの海洋探検家ジャックイブ・クストー氏が二十五日午前、パリ市内の自宅で死去した。八十七歳だった。

 「世界でもっとも知られ、愛されたフランス人」といわれる。南西部ボルドーの生まれ。仏ブレスト海軍学校を卒業して海軍に入った。一九五〇年代から海洋調査船カリプソ号で紅海の調査に乗り出したのを皮切りに世界の海を回り、海中の世界を紹介した「沈黙の世界」は世界的ベストセラーになり、同名の映像は五六年のカンヌ映画祭でグランプリを獲得した。水中呼吸装置スキューバ(商品名アクアラング)の開発者でもある。九二年の地球サミット(環境と開発に関する国連会議)に出席して、環境破壊を警告。核兵器にも強く反対し、個人的には親しいシラク仏大統領が九五年に核実験の再開をすると直ちに抗議して次世代評議会議長を辞任した。

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 地球環境サミットがブラジルのリオデジャネイロで開かれたのは92年6月だ。クストー氏は記念講演で、人口爆発への対策が早急に必要だと訴えた。そして、11月10日~13日、東京の日本学術会議講堂で開かれた第1回科学ジャーナリスト世界会議のために日本にやってきた。

 基調講演は、リオ会議の興奮を伝えることから始まった。国家首長106人と各国代表135人ほどが集まっただけでなく、800以上のNGOが世界各地から集まったことを喜んでいた。そして、リオ会議の成果について

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