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点検ではなく、天井取り外しが必要だ:笹子トンネル崩落事故

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

中央道・笹子トンネルの天井崩落事故には衝撃を受けた。たかが天井に、何でこんなに重いコンクリート板を使っていたのだろうか。老朽化だなんだという前に、そもそも設計がおかしいと思う。国土交通省は、同じつり天井構造のトンネルの緊急点検を指示したというが、点検よりも取り外しを指示すべきではないのか。

 天井は、建物であれ、トンネルであれ、構造材ではない。つまり、建物やトンネルを支える役割を果たしているわけではなく、単に見栄えをよくするためにつけているものだ。笹子トンネルの場合、換気のためにトンネル上部の空間を天井で区切ったという。このやり方は笹子トンネルができた77年当時は一般的だったが、最近は換気用に大きなファンをつける方式に変わっている。つまり、そもそも必要のない天井だったのだ。77年当時にどうしてそれに気づかなかったのかと言っても詮無いことかもしれないが、せめてこんな重いものをつり天井としてぶら下げる危険性については気づいて欲しかった。重いものを頭の上につり下げたら危ないことぐらい、子どもでもわかる。

 トンネルでのコンクリート落下といえば、1999年に新幹線で頻発したことを思い出す。6月に福岡トンネルで、10月に北九州トンネルで起きた。このときも対策は「点検」だった。目視と金づちなどでたたいた音で異常を調べる打音検査をし、山陽新幹線の全トンネルでコンクリート劣化のおそれがある異常音が約4万カ所で見つかり、うち落下防止対策が必要な場所が約1万1000カ所あったと発表されている。はく離しそうな部分はたたき落とし、必要な場所には補強工事をした。その後、新幹線のトンネルでコンクリート落下事故が起きたというニュースは聞かないので、このときの手当ては奏功したといえるのだろう。

 だが、それにしても142本のトンネルで1万1000カ所という数の多さにたじろぐ。単純に割り算すれば、トンネル1本に77カ所である。徹底点検をすれば、それぐらい対策が必要な場所が見つかるということだ。

 コンクリートは、

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