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20年に渡り半導体の世界王者として君臨し続けてきた米インテルが会社存亡の危機に直面している。かつてPC(パソコン)がメインフレーム(大型コンピューター)を駆逐したように、現在、スマホがPCを駆逐しているからだ。

 スマホの爆発的普及によりPCが売れなくなり、その結果、PC用半導体プロセッサを基幹事業としているインテルは苦境に陥った。

 これまでPCを独占する礎だった米マイクロソフト(MS)との「Wintel」連合も崩壊した。MSは、今売出し中のWindows8を、インテルだけでなく英ARM系のプロセッサでも動くようにしたからだ。

 その上インテルは、2000年前後から携帯電話用プロセッサに進出しようと企業買収や提携を繰り返してきたが、すべて失敗している。その結果、現在、インテルのスマホ用プロセッサの世界シェアはたった0.2%しかない。

拡大

 企業買収や提携による新規事業に十数年も失敗し続けている原因には、3代目CEOアンドリュー・グローブが築き上げた強固な“インテルカルチャー”があげられると私は分析している(図1)。

 「パラノイア(偏執狂)だけが生き残る」という名言で知られるグローブは、恐怖政治と強烈な中央集権体制を確立することにより、全社員のすべてのエネルギーを搾り取り、徹底的にPC用プロセッサに集中させた。

 グローブの前では「誰もがこき下ろされ」、「人々は怯え」、「一度決定したら一切覆すことができず」、「彼のやり方ですべてのものを押しのけて進み」、「邪魔者は切り捨てられた」(ロバート・A・バーゲルマン著『Intelの戦略』ダイヤモンド社)。

 このようなグローブの偏執狂的マネジメントが

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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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