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「イノベーション」と言わなくなった安倍首相

高橋真理子 朝日新聞 科学コーディネーター

安倍新内閣が26日に発足した。優先課題はデフレ脱却だという。そのために、日銀に金融の大幅緩和を求め、国債増発による公共事業拡大を進めると総選挙中から主張していた。結果として円安、株高が進み、「アベノミクス」(安倍+エコノミクスの造語で、安倍さんの経済政策という意味)の効果と金融・証券市場でもてはやされている。
拡大首相官邸で記者会見する安倍晋三首相=26日午後10時過ぎ

 だが、不思議に思うことがある。最初の首相就任のときにあれほど連呼した「イノベーション」が今回はさっぱり聞こえてこないのである。総理就任会見での冒頭発言でも、この単語を口にしなかった。6年前は、こちらの耳にタコができるほどイノベーションと言い続けていたのにどうしたのだろうか。イノベーションはもはや必要ないと考えて、公共事業頼りの経済を「取り戻す」なんて考えているのだろうか。

 06年に小泉純一郎元首相のあとを受けて首相に就任したときの「アベノミクス」は、減税を目指し経済成長を重視する政策を指した。今回は消費税増税が既定路線なので、金融緩和を日銀に求め、「国土強靱化」という言葉を使って公共事業の復活を目指している。しかし、消費税増税は国の赤字を減らすためにするのに、一方で借金を増やして公共事業をやると言っているのは、全体として見たらわけがわからない政策である。「アベノミクス」などという呼び名でもてはやしている側もどうかと思う。

 最初の首相就任時を振り返ると、安倍さんは「イノベーション担当大臣」というポストを新設し、そこに今回政調会長に抜擢した高市早苗氏を充て、すぐに長期戦略指針「イノベーション25」の策定を指示するなど、矢継ぎ早にイノベーション推進政策を進めたのだった。今回、イノベーション担当大臣はいない。「○○担当大臣」はいくつも新設したが、目玉は「国土強靱化担当大臣」である。路線変更は明瞭だ。

 もっとも、イノベーション推進は安倍さんの専売特許とは言えない。2004年に ・・・ログインして読む
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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞 科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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