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街で見つけたデジタルでない物理空間の良さ

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 世の中、年始のお休みということで、今回は少しリラックスした話題にしたいと思う。

 暮れに代官山から渋谷を散歩した。お目当ては、代官山の蔦屋書店(TSUTAYAの新形態の店舗である)、渋谷の東急本店7Fの丸善+ジュンク堂、新装開店となったタワーレコードである。結局、いろいろな本やCDを買って帰ってきた。私自身も、多くの人と同様、ふだんは本やCDは、アマゾンを利用している。しかし今回、これらの店舗では、想定外の本やCDを見つけて、思わず買い込んでしまった。

 インターネットの爆発的普及であらゆる情報やサービスがネット上に展開し、ほとんどのことはネット上で見つけることができ、購買することもできる。すごいことである。しかし、いつも思うのは、インターネットでは、偶然の発見の度合いが弱い気がする。もちろん、検索して知らないことがわかることもあるし、フェイスブック(FB)などで新しい人に出会うということもある。これらは、逆に従来はなかったような偶然性である。とはいえ、それらは、ある意味で自分が主体的に検索したりしている周辺の情報などであって、全く想定していない領域での発見であることは少ないように思える。それに対して、物理的な店舗を歩くと、自分では意識していない領域の情報が入ってきて、好奇心を刺激される。発見の質が違うように思うのである。

 とはいえ、どのような店舗でもこのようなことが起こる訳ではない。おそらく、快適で知的な意味で刺激的な空間、卓越したキューレーション(つまり、何を展示し、どのようにレイアウトするかなど)、または、メガ・スケールであるかなどがポイントかもしれない。

 よく考えると、これらは、ネット・サービスの弱みである。

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