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いっそう遠のく「原発のトイレ」建設

竹内敬二 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

米国の放射性廃棄物の廃棄処分計画がまたも先延ばしになった。米エネルギー省は1月はじめ、高レベル廃棄物について「2021年までに試験的な中間貯蔵施設をつくり、2048年までに地下に埋める最終処分場を建設する」計画を発表した。世界的にみても、地層処分が遅れ、なかりの長期間にわたって地上で管理しながら先を考える方向に動きつつある。米国のさらなる足踏みは世界に影響を与える。どこの国も他国のトイレを建設してはくれない。「トイレがなかなか建設できない」という「後ろ」の制約条件から原発計画を考えるべき時代になっている。「何とかなるだろう」という甘い考えで廃棄物をため続けると、将来、大変なことになる。

 米国はこれまでネバダ州のヤッカマウンテンに高レベル廃棄物の最終処分場(地中への廃棄)建設を計画していた。

 ヤッカマウンテンは砂漠の中の町ラスベガスから車で3時間ほどもかかる。一面の砂漠で近くには地下核実験場や、空軍の訓練エリアがあるだけだ。そこを見学した日本人はだれもが、「こんな砂漠で地層処分ができないなら、世界のどこでできるのか」という気持ちになる。

 私が取材で訪れたのは1990年代半ばだが、地質学者が「約10万年前に地下水位が上がって水が噴き出した場所がある。地層の安定性に問題がでてきた」と話していた。「そんなに厳しいのなら火山列島の日本ではどうなるのか」と思ったことを記憶している。

 米国はそのヤッカマウンでの計画を、2010年、オバマ政権のときに白紙撤回した。そしてエネルギー省の諮問機関「ブルーリボン委員会」を設置して検討し、2011年7月、「中間貯蔵施設での100年程度の管理を考える」という報告書を出した。

 そして今回、それを具体化する方向での報告書を出したものだ。21年に試験的な中間貯蔵、25年に大規模な中間貯蔵施設をつくり、2048年までに最終処分場をつくるというものだ。しかし、それらを建設する場所は未定だ。まさに、ヤッカマウンテンを捨てて「振り出し」に戻った。米国も高レベル廃棄物処分には苦労している。

 日本も進んでいない。日本学術会議は昨年9月、火山活動が活発な日本で万年単位で安定した地層を見つけるのは、現在の科学的知識と技術能力では限界があるとして、地中廃棄計画を白紙に戻し、とりあえず、数十~数百年の間、地表などに一時保管(中間貯蔵)することを提言した。

 これに対して原子力委員会は、11月、これまで通り地層処分を考えていくことを明らかにした。

 米国や日本は同じ悩みの中にいる。「地層処分は長期の安定性など難しい点が多い。しかし、それでも地中に捨てるしか方法はない」ということだ。

 日本の場合、最終処分場選びはまったく進んでいないし、今後、進むような雰囲気もない。六ケ所村再処理工場で使用済み燃料の再処理をすれば、高レベル廃棄物の体積を減らすことはできるが、それは不要なプルトニウムをつくり出すことになってしまう。

 また、炉心溶融を起こした福島第一原発の1~3号機から、世界が扱ったことのない高レベル廃棄物が出てくる。これをどう処理し、「どこに埋める」のかも大問題になる。1986年に大事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発では、原子炉をコンクリート・パネルで覆う「石棺」をつくっただけで、放置している。

 原発を持つ国は約30カ国あるが、高レベル廃棄物の最終処分場計画が決まっているのはフィンランドとスウェーデンだ。フランスが進みつつある。その程度だ。「将来自分の国が処分できる廃棄物の総量」を考えて原発計画を考えるべきだろう。解決策がないのに、毎年毎年、高レベル廃棄物を蓄積し続けると将来のエネルギー政策が破綻することになる。

 各国の廃棄物処分計画

 【スウェーデン】2011年3月、廃棄物を処分する主体であるSKB(スウェーデン核燃料廃棄物管理会社)が、フォルスマルクを処分場予定地とする許可申請をした。フォルスマルクは原発の所在地。再処理をせず、使用済み燃料の直接処分方式。地下500メートル、処分場の操業開始は2025年を予定。全ての原発が出す廃棄物の総量を捨てることができる能力をもたせる。

 【フィンランド】001年にオルキルオトを処分場に決定し、工事をしている。地下400メートル。直接処分。2020年に操業開始の予定。世界で最も進んで

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筆者

竹内敬二

竹内敬二(たけうち・けいじ) エネルギー戦略研究所シニアフェロー

エネルギー戦略研究所(株)シニアフェロー。元朝日新聞編集委員。科学部記者、ロンドン特派員、論説委員などを務め、環境・原子力・自然エネルギー政策、電力制度などを担当してきた。温暖化の国際交渉、チェルノブイリ原発事故、3・11などを継続的に取材。著書は、電力業界が日本社会を支配するような社会産業構造がなぜ生まれたのか、なぜ福島事故がおきたのかを描いた『電力の社会史 何が東京電力を生んだのか』(朝日選書、2013年)。

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