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地球科学者からみたアルジェリア人質事件の教訓

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

福島原発事故を始めとする事故の類いでは必ず検証の手続きが入る。それは今回のアルジェリア人質事件にも当てはまろう。今後、同じ惨事を繰り返さないためにも、きちんとした検証が必要だ。今の場合だと、

(1)テロは防げたか(原発になぞえると、事故は防げたか)?

(2)巻き添えになるのを防げたか(原発になぞえると、避難の手続きは良かったか)?

(3)救出する為に出来た事はあったか(原発になぞえると、農業などの放射能対策は適切だったか)?

の3点だ。この基本検証なしに、いきなり自衛隊法改正を語るのは、我田引水のそしりを免れない。

 以上の3点のうち、3つ目に関しては欧米ですら何も出来ていない。1つ目もマリ介入をした以上は、何らかのテロが何処かで起こるのを防ぐのは無理だし、今回も欧米すら予防できなかった。となれば、日本として手を打てるのは、2つ目の巻き添え予防だけである。そして、この点に関しては、危険情報の事前収集が有効であるということで、衆論は一致しているだろう。それは安保理決議に際して戦略的に必要であり、実際の介入に際しても戦術的に必要だ。

 危険度の「診断」のための地域規模の情報の収集と言えば、地球科学者にもなじみがある。というのも、まさに我々は、地球を診断すべく地球規模のデータを集めているからだ。観測網を展開するに当たっては、その前提として「どんな情報が欲しいのか?」と「その情報を得るのは誰が一番ふさわしいか?」の2点をはっきりさせる事が基本だが、これらは地球規模の安全情報の問題にもそのまま当てはまろう。例えば、

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