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4Kテレビに思う「技術力の本質」

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

最近、4Kテレビが話題である。総務省も先日、4Kテレビ用の放送を2年前倒しして2014年7月に開始すると発表した。世界初になるという。Kはキロ(1,000)を表す。4Kテレビは、正確には4K2Kで、約4,000×2,000の画素数(解像度)をもつ。現在主流のフルハイビジョンが2K1Kなので、その4倍である。
拡大1月に米ラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市「CES」で東芝が発表した4Kテレビ=長崎潤一郎撮影

 何かものすごい技術革新があったように報道されているが、実は4K2Kディスプレイは10年も前から存在している。例えば、ビクターは2000年にすでに4K2Kパネルの開発に成功し、そのパネルを用いたプロジェクターも2004年に発売している。さらにいえば、このときすでに、さらに4倍の解像度をもつ8K4K(約8,000×4,000)のパネル開発にも成功している。経緯を知っている者からすると、4Kテレビはずい分遅い製品化に思える。

 近頃、「スピード感を持って」という言葉がはやっている。うさん臭い言葉である。ただ、4Kテレビの報道に接すると、こういうときに使う言葉なのかな、とも思えてくる。つまり、もっと早い時期に商機を見出すことはできなかったのだろうか、という残念な疑問である。

 私は電子ホログラフィという技術を用いた3次元テレビの研究を続けている。情報を記録しているものをホログラムといい、液晶ディスプレイ(LCD)を使って実験を行っている。ホログラムを表示するためには、LCDは高精細(画素間隔が狭い)であるほどよく、解像度(画素数)も多いほどよい。

 電子ホログラフィの研究が本格的に始まったのは1990年代で、その頃のLCDは光を透過させて使う透過型がほとんどだった。ところが、透過型LCDでは、画素間隔が30ミクロン程度までしか高精細化できない状況にあった。電子ホログラフィで3次元テレビを実現するには1ミクロン以下の高精細化が必要だと見積もられているので、実験レベルにしても十分とはいえなかった。

 1990年代の終わり頃になると、光を反射させて使う反射型LCDが進展してきて、数社で売り出し始めた。反射型LCDは制御回路を裏面に組み込めるので、表面の液晶素子は密に配置することが可能である。高精細化は一気に10ミクロンまで進んだ。

 私たちはさっそく反射型LCDで実験する計画を立てた。ところが、反射型LCDはなかなか入手できなかった。はっきりいえば、

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筆者

伊藤智義

伊藤智義(いとう・ともよし) 千葉大学大学院工学研究院教授

1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」をめざし研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、秋田書店少年チャンピオン「永遠の一手」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など

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