2013年02月16日
再生医療をめぐって、日本は「不思議の国」と海外から見られているかもしれない。
再生医療と一言でいっても幅広い。傷ついた細胞や臓器を再生させることによって治療するもので、未来の医療として期待されている。ところが、民間クリニックなどではすでに、再生医療をうたう医療が、医師の裁量によって盛んに行われている。患者の脂肪や脊髄から取った幹細胞を培養して体内に入れ、がんや糖尿病、アルツハイマー病など、さまざまな病気を治療する、という触れ込みだ。若返りをうたって美容目的で行われることも多い。だが、科学的根拠はなく、安全性の点でも大きな疑問がある。治療を受けた人が亡くなる例も出ている。
かつて、こうした再生医療が中国や東南アジア、中南米などで広がり、大きな問題になったことがある。このため、国際幹細胞学会が2008年、警告を発表した。ところが、その後も、先進国ではほぼ唯一、こうした治療に対する規制がないのが日本だ。規制の厳しい韓国などを逃れて日本でこうした治療を行う例が目立ち始め、日本再生医療学会は2011年、税金逃れに使われる「tax haven」ならぬ「therapeutic haven」として日本が使われかねないとして、強い懸念を表明した。
ようやく規制される見通しになったわけだが、こうした治療が野放しになる一方で、厳しい規制があるのが実験室レベルの研究だ。その代表例が胚性幹(ES)細胞だ。山中伸弥京大教授が開発してノーベル賞を受賞したiPS細胞は、受精卵を使わずにES細胞と同様の性質を持たせたもので、研究の歴史が長いES細胞はiPS細胞を知るうえでも重要、との声は研究者の間でも強い。しかし、かつて倫理面での懸念が表明されたことから、依然、厳しく規制されたままなのだ。
米国の研究者たちが、
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