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目の難病である加齢黄斑変性に対して、iPS細胞を用いた臨床試験が始まる見込みになった。神戸市の先端医療センターの倫理委員会が、「安全性についての結果を臨床委員会に報告する」という条件付きで、同センターでの臨床試験を承認したのである。国が承認すれば、世界で初めてのiPS細胞を用いての臨床試験がiPS細胞の発明された日本で始まる。この臨床試験は安全性の確認が主な目的になっている。

 そう聞くと、「安全性もまだ100%わからないのに、ヒトに直接つかって、安全性を確認しようとしているのか。これは、人体実験ではないか」という素朴な疑問が出てくるかもしれない。そこで、再生医療を含めた生命科学の研究をしている立場から、人体実験と臨床試験の違いは何なのかについて、筆者の意見を述べる。

 まず、ヒトで試す前に、動物で安全性を確認すればよいではないか、という意見があると思われる。もちろん、そうである。iPS細胞の場合も、数えきれないほどの動物実験で安全性、また、有効性を確認した。すべての薬、治療法において、培養細胞、動物をつかって安全性、有効性をまずは確認する。しかし、残念なことに、多くの薬が、培養細胞や動物では、有効であり、安全性も確認されたにも関わらず、ヒトではまったく効かない、あるいは毒性が出てしまう。

 先日、国際的に評価の高い、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences,)に、

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筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

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