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 アフリカには複数の国にまたがって自然保護区が設定されることが多い。ケニアのマサイマラ国立公園とタンザニアのセレンゲッティ国立公園はつながっているし、ウガンダのンガヒンガ国立公園、ルワンダの火山国立公園、コンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園もそうだ。21世紀になってから、カメルーンのロベケ国立公園、中央アフリカのザンガ・ンドキ国立公園、コンゴ共和国のヌアバレ・ンドキ国立公園が一体となって管理されることになった。

 アフリカ諸国は植民地時代に引かれた国境を独立後も維持していることが多く、同一民族が国境をまたがって暮らしている。多くの国が多民族国家でさまざまな文化や慣習が入り混じる。国境周辺で民族間や政治的な紛争が頻発し、その調停や解消に各国は頭を悩ませている。そのための手段として、国境周辺の地域を自然保護区にして一般人の立ち入りを禁じ、複数の国で協力して管理しようというのがこれらの国境を接する保護区設立の狙いだった。

 これまでいろいろとトラブルもあった。国境をまたぐ保護区は紛争の際に兵士や難民が流入する避難場所となったし、国際取引が禁止されている象牙やサイの角などの密輸ルートにされたこともある。しかし、これらの保護区は未だに消滅することなく維持されている。

 それは、これらの保護区を国際的な協力のもとに守ろうとする強い意志が働いているからだ。1979年に締結されたボン条約は長距離を移動する動物を保護することを目的としている。このボン条約によって2009年はゴリラ年と指定された。ゴリラの分布域は狭く、決して長距離を移動するわけではないが,これらの保護区で国境を行き来して暮らしている。絶滅の危機に瀕しているゴリラを救うためには複数の国が協力しなければならないので、ボン条約を適用したというわけだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

山極寿一

山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 京都大学総長、ゴリラ研究者

京都大学総長。アフリカの各地でゴリラの野外研究に従事し、その行動や生態から人類に特有な社会特徴の由来を探り、霊長類学者の目で社会事件などについても発言してきた。著書に『家族進化論』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか』(NHKブック ス)、『ゴリラは語る』(講談社)、『野生のゴリラに再会する』(くもん出版)など。

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