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高校生の科学研究から見える日米の大きすぎる差

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

高校生による科学研究コンテストとして米国が世界最高峰と誇りにしている「インテル・サイエンス・タレントサーチ(Intel Science Talent Search: Intel STS)」の2013年の最終結果がこのほど発表された。STSは、1942年にウエスティングハウス(Westinghouse)がスポンサーとなって始まり、1998年からは、現在のインテルがスポンサーになった。優勝者には賞金$100,000(約950万円)が奨学金として授与される。また、約70年の歴史の中で、このコンテストの入賞者から、ノーベル賞受賞者7人、数学のノーベル賞といわれているフィールズ賞受賞者2人のほか、世界の各分野の天才たちに与えられるマッカーサー財団フェローシップ受賞者(11人)や米国科学アカデミーメンバー(30人)も輩出している。まさに、世界最高峰の「科学者の卵」発掘コンテストに恥じない実績である。
2012年5月にあったインテル国際学生科学フェア(ISEF)に日本代表として出場したJSECの上位入賞者たち=米国ペンシルベニア州ピッツバーグ

 日本国内でも、高校生科学技術チャレンジ(Japan Science & Engineering Challenge:JSEC)が2003年から行われている。朝日新聞社の主催で始まり、2011年からテレビ朝日も主催者に加わった。JSECは、上記のSTSの国際版である「インテル国際学生科学フェア(The Intel International Science and Engineering Fair: ISEF)」の国内予選をも兼ねている。

 筆者は、米国で研究・教育を行っていた25年あまりの間に、数名の高校生にSTSにエントリーするための研究指導をした。また、日本に来てからの3年間あまりで、JSECへ向けての研究指導を数名の高校生におこなってきた。両方の経験ならびにSTS(2013年)とJSEC(2012年)の入賞研究を比較すると、日米のあまりに大きな違いが見えてくる。

 まず、STS(2013年)入賞研究で、筆者の専門分野である生命科学・医科学に関連するものの一部を紹介する。

「持続可能なエネルギー源としての藻類バイオ燃料の効率化:脂質合成増強種の人工的選択」(優勝)

「バイオインフォマティクスによるヒト疾患に関わる内在的異常タンパク質の同定と解析」(2位)

「グローバル神経ネットワーククラウドサービスを用いた乳がん診断」(8位)

「ガン治療新規ターゲットとしてのKLF6ガン抑制因子の翻訳後調節部位の同定」(入賞)

なお、テーマ名は英語原文を筆者が意訳した。

 一方、JSEC(2012年)では以下のようなテーマが入賞した。

「ゾウミジンコの走性に関する研究」(科学技術政策担当大臣賞)

「闘蟋(とうしつ):コウロギの闘争行動解析」(花王賞)

「オヤニラミの闘争行動を引き起こす刺激」(テレビ朝日特別奨励賞)

「サンショウウオの飼育下での繁殖方法の確立を目指して」(審査委員奨励賞)

 これらの入賞研究テーマを比べるだけでも、その差は明らかだが、

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