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エレベーター事故はなぜ再発したのか

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

2006(平成18)年6月3日、男性がエレベーターから降りようとしたところ、戸が開いたままの状態でエレベーターが上昇し、乗降口の上枠とかごの床部分の間に挟まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。その公判が、6年9カ月後の今年3月11日に、ようやく始まった。遺族の方々の心中は察して余りある。

 公判開始が遅れたことよりもっと問題だと思うのは、昨年10月31日に扉が開いたまま上昇して女性が挟まれて亡くなるという、同様のエレベーター事故が再発したことだ。私は教員として技術者を育てる立場にあり、防がなければならない再発事故が起きたことに、少なからぬ動揺を覚えた。事故の原因が突き止められ、対策が取られ始めたばかりの再発事故だったからである。

 平成18年の事故後、国土交通省は昇降機等事故対策委員会を設置し、平成21年9月8日に報告書をまとめた。1ページ目は、次の言葉だけが記載されている。

「本報告書の調査の目的は、本件エレベーター事故に関し、昇降機等事故対策委員会により、再発防止の観点からの事故発生原因の解明、再発防止対策等に係る検討を行うことであり、事故の責任を問うためのものではない。」

 この言葉には、利害関係から裁判が長引くおそれがある中で、その動向にとらわれることなく、早期に原因を究明し、再発を防止しようという意志が読み取れる。しかし、事故は再び起きた。

 私は

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筆者

伊藤智義

伊藤智義(いとう・ともよし) 千葉大学大学院工学研究院教授

1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」をめざし研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、秋田書店少年チャンピオン「永遠の一手」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など

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