2013年04月03日
もともと原子炉周辺には、さまざまな目的の配管が張りめぐらされている。途中のバルブなどをうまく操作すれば、本来の目的でないルートで一本の道を作り、外から原子炉に注水できる。3月13日朝から、この日だけで400トンを消防車から注水。「当面の危険は避けられた」と政府も発表したが、3号機は翌日水素爆発。結果において水は原子炉にほとんど届いておらず、途中枝分かれした配管から復水器という装置に大量の水が溜まっていた。このことは2週間も後になってからはじめて発表された。
そもそもこのような複雑な操作を、一度も練習してこなかったのが大きな問題だった。だがそれにも増して、注水が原子炉ではなくて復水器に達してしまった原因が興味深い。平常運転では復水器側の気圧が高く、それが水の浸入を防ぐはずだった。ところが全電源停止の異常事態で復水器の気圧が下がっていることに、誰も気づかなかった。
結局、危機状態での操作が、平常運転での周辺条件を前提に行われていたナンセンス、ということになる。その意味では、以前にも検証された2号機の場合と同じだ(本欄拙稿「メルトダウン 連鎖の真相」)。その上、そのことが判明するのに、専門家による何週間〜何ヶ月もの検証と実験を要した。
複雑なシステムのふるまいを予測するのは、もともと簡単ではない。非常事態で周辺条件も異常だったり、あるいは仮設でつぎはぎだらけだったりした場合にはなおさらだ。当然トラブルシューティング(=原因究明)にも時間を要する。そして時間を要すること自体もまた危機を深める。
以上を念頭に置いて、今回のネズミによる停電事故は「想定外だった」のだろうか。
そうとも言えるし、違うとも言える。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください