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暗黒物質について急に知りたくなったあなたへ

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

暗黒物質が先週、脚光を浴びた。だが、新聞記事を読んでも、多くの方はおそらくピンと来なかっただろう。今回、国際研究グループが欧州合同原子核研究機関(CERN)で発表した内容は、「暗黒物質が、これまで見つかっていない素粒子であるとしてもおかしくない観測結果を得た」というもの。まだまだ煮え切らないのである。それでも、物理学者たちは沸き立っている。ヒッグス粒子は「今までの物理学の枠の中で空席だった最後の粒子」だが、今度のは、もし確証が得られれば「今までの物理学の枠を超える最初の粒子」だからだ。新奇な素粒子の発見。これほど物理学者たちをうっとりさせるものはない。

 暗黒物質とは、重力源にはなっているけれど、見えない物質のことだ。なぜ、見えないのに「ある」と天文学者は断言するのか。それは長い物語があるのだが、最初は、渦巻き銀河を観測し、端の方にある星々のスピードを測ったら、変だと気づいたのである。銀河中心の周りを回るスピードが早い。早すぎた。ロケットの場合、地球に落ちてこないだけのスピードで打ち上げると、地球をぐるぐる回る周回軌道に入る。もっとスピードを持たせると、地球の引力圏を飛び出す。速いスピードでぐるぐる回っているということは、それを引き付ける力が強い、つまり強い重力源があるということ。ところが、銀河の中で見えている星を足し合わせてもそれほどの重力源にならない。だから、見えない重力源がないとおかしい。

 次に大きなヒントになったのが、

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