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続報!電王戦第4局「入玉戦」の壮絶

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 第2回電王戦の第4局が、塚田泰明九段と、会社員伊藤英紀氏が開発したPuella αとの間であり、持将棋(じしょうぎ)で引き分けとなった。序盤は双方とも矢倉を組む戦いから、コンピュータ側が優勢に展開していたが、塚田九段は、途中から入玉戦を決意。それにコンピュータ側も対応し、先に入玉する。塚田九段は、入玉一歩手前の2六玉で、体勢を立て直しつつ、結局は入玉。後半はお互いの玉が相手陣地内に入る相入玉となり、相手の駒をとり合って、駒の点数の合計で勝負を決めるという前代未聞の戦いとなった。極めて不利なところから引き分けにもち込んだ塚田九段の執念が印象に残る。

 非常に興味深い戦いであった。コンピュータ将棋の強さは、過去の棋譜を用いた評価関数の学習(盤面評価能力)と、膨大な計算能力に支えられた状態空間の探索(つまり手を読む能力)からくる。しかし、当然ながら入玉戦の棋譜は極めて少ない。また、途中から相手を詰ますよりも駒の得点を稼ぐ争いになるので、その段階で適切に評価関数を変更する必要がある。しかし、同時に、入玉戦でも詰ます可能性がまったくないとは限らないという難しい局面を迎える。実は、コンピュータ将棋の最大の弱点が入玉戦であることはよく知られている。第1回電王戦で、ボンクラーズに敗れた米長邦雄元名人も、入玉すれば勝ち目があるとしてそこに勝機を見いだしていた。

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