2013年第2回大会観戦記
2013年05月01日
私はこの対局をニコニコ動画で見始めたのだが、結局、対局後の記者会見まですべて見てしまった。ネット中継からも、その衝撃は伝わってきたように思える。
とくに第5局は、三浦八段にこれといった失着があったとは思えない。それなのに、相手の矢倉に攻めを仕掛けることもできず、入玉戦にも持ち込めず、完全に力負けという様相といえた。三浦八段はGPS将棋が入玉戦にも力を発揮できることを練習で認識しており、入玉戦をめざした訳ではないと、対局後のインタビューで発言している。しかし実際には、たとえ入玉をめざしたとしても、GPS将棋はそれを阻止する打ち手を交えながら対局を進めていたので、入玉戦に持ち込むことも難しかったと思われる。
第5局は、プロ棋士の力負けともいえる展開で、とくに目立った失敗がないのに完敗してしまったということは大きな衝撃である。勝ち負け自体以上に、このことが試合後の対局室の空気を非常に重苦しくしたといえる。この内容での敗戦は、あまりに精神的ショックが大きい。対局後の記者会見でも、三浦八段は「どこが悪かったのかわからない」と語っている。これは、一つひとつの指し手の評価において、GPS将棋がプロ棋士を上回っている可能性を示唆していると思われ、明確な失着による敗戦よりもはるかに衝撃度が大きい。
また序盤戦で、GPS将棋は、定跡に沿った展開のなかで今までの定跡にない手(後手42手目8四銀)を指している。これが新定跡の発見につながるかなどの可能性も含めた今後の検証が重要になる局面も出てきた。
ネット中継にときどき表示されるGPS将棋の先読みの可視化画面を見ると、中盤からほとんどの状態で優位となり、最終局面の100手近くでは、全指し手での大幅な優勢評価となっていたように見えた。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください