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続々・大学にやってきた黒船「ムーク」〜究極的には人間観が問われる

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

第二に、グローバル化への対処、特に言語の問題が火急となるだろう。

 もともと「世界大学ランキング」で日本の大学が低めの評価しか得られず、その上ランクが年々下がっていることが、危機感をあおった。その対処の一環として東大が秋入学を宣言するなどの経緯があった(今は後退気味だが)。

MITのウェブサイトでは都市ごとのアクセス数が示される。この画面では中東で最も熱心といわれるイランの30都市から利用者が集まっているのがわかる=MITオープンコースウエア提供

 ムークの波及はグローバル化へのさらに大きな圧力となる。というのも(前々稿でふれたように)ムークをショーウインドーとして、世界中の大学が比較されるからだ。

 

 確かにムークの人気講義は自動翻訳ソフトにかかり、たちまち何カ国語もの版が出回る。しかしコミュニケーションの生の部分、特に微妙なニュアンスやユーモアが翻訳で伝わりにくいのは、映画の吹き替えなどを見ても自明だろう。現在の日本の大学に、英語で魅力的な講義をできる教員が何割いるのか。またそれがどのように「学内の」教育の質に貢献できるのか、心もとない。

 実際カリフォルニア工科大学(カルテック)とは逆に、日本の大学は「内部の教育の質をあげる」ことではなく、「外国からの黒船の来襲」に反応する形で、事態に対処しようとしているように見える。それでバランスを崩さないか、心配だ。

 

 そういえば昨年あたりから

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