2013年第2回大会観戦記
2013年05月22日
電王戦を素材に「人間とコンピュータ」の関係を考えてみたい。その意味では第4局の塚田泰明9段 vs. Puella αの一戦が、後世に残るかも知れない。その一戦は入玉模様といわれる独特の戦いとなって、予期せぬ展開に、という所まで書いた。
実はこの将棋、中盤から塚田9段の完全な負け形で、持将棋の引き分けにすら点数が全く足りないという状況だった。しかし入玉模様からソフトの混乱に乗じた塚田9段が、粘りに粘る。そしてついに貴重な大駒をもぎとり、ぎりぎり引き分けに持ち込んだ。会場も二コ動の画面も「プロの意地を見せてくれた」と称賛の嵐となった。だが本当の衝撃はその後に来た。
終局直後の会見で、「投了も考えたか?」というぶしつけな質問に塚田9段は一瞬絶句。「(団体戦なので)自分からは……」とだけ言うと、突然涙を拭ったのだ。
確かに「そんなにしてまで勝ちたいのか」(観戦記や著書で有名な河口俊彦プロ7段)とプロ仲間に言わしめる状況だった。プライドを捨てて、負けに近い引き分けを選ばざるを得なかった屈辱。それでもなんとか負けずにすんだ安堵感。その両方が涙腺を緩ませたのだろう。
ただ後日、全局終了後の記者会見では「負け将棋をやっと引き分けに持ち込んだだけで、こんなに褒められたのは初めて」と苦笑しながらコメントした。それで観ている側も救われた気分になった。
さて、今後を占う上でまず、いくつかの誤解を解いておかなくてはならない。
まず、
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