秋山仁(あきやま・じん) 数学者、東京理科大特任副学長
1969年東京理科大学応用数学科卒、72年上智大学大学院修了。日本医科大助教授などを経て82年から東海大学教授、2012年から東京理科大理数教育研究センター長。駿台予備校でも長年教えた。著書に「離散幾何学フロンティア」「教育羅針盤」「数学ワンダーランドへの一日冒険旅行」など。専門は離散幾何学。趣味はアコーディオン演奏、ヨット
少し前に、iPhoneが世界中で一人勝ちしていた頃、BSの報道番組で長谷川閑史経済同友会代表幹事が次の指摘をしていた。「日本の技術者たちと話していると『iPhoneは既存の部品を組み合わせただけで、技術的には新しいものではなく、大したことのない製品だ』という声をよく耳にする。でも、自分たちには優れた技術力があると誇るなら、世界中の多くの人が欲しがるああいう製品を思いつかないことが問題ではなかろうか」と。この指摘はまさに日本の弱点を言い当てていると思う。
多くの研究開発の現場は、「この方向で進めればいいだろう」という大きな方針や方向性があって、その流れのなかで試行錯誤し他と競争しているのが普通だ。そうやって日夜、改善が行われ、様々な分野で研究開発が進められている。そんな中で、研究開発の大きい流れの方向を一気に変えたり、新しい流れを生み出したりする大きな成果が「発明」や「発見」と称される事象だ。近年、日本の研究開発や製造の現場に期待されている「開発力の向上」とは、「発明」や「発見」の名に値する大きな成果を出すことである。
しかし、それがなかなか出てこない。「よくあるタイプの問題を解くのは得意だが、未知の問題には完全にお手上げで白紙解答が続出する」とか、「問題や課題を自分で見つける力が、知識量と比べて遥かに弱い」などといった傾向を何とか変えていかなければならないのではないか。
発明や発見には、主に次の2つのタイプがあると思う。ひとつは、「コロンブスの卵タイプ」でもうひとつは「ニュートンのりんごタイプ」である。
コロンブスタイプというのは、
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