2013年06月05日
2012年7月に導入された固定価格制度(FiT制度)が大きな効果を見せている。エネ庁が5月17日に公表したデータによれば、FiT制度導入以降今年2月末までで、約1,306万kW分の自然エネルギー設備が認定され、そのうち運転開始したものは 約135万kWだ。
特に太陽光の勢いが大きく、認定された施設の94%、約1,225万kWにものぼっている。すべてが運転開始されれば、これまでの太陽光発電の合計導入量約530万kW(2011年度末)が一気に三倍以上になる。 今年4月から導入された新しい買取価格が低下したため、2月の駆け込み登録は、526万kWという記録となった(繰り返すが、2011年末までの日本の太陽光導入実績が530万kW)。3月の設備認定も同じような規模となる可能性があり、2012年度の設備認定が1,500万kWを超える事は確実だろう。
認定された太陽光設備のほとんどが10kW以上の事業用太陽光発電であり、 報道をみると、さまざまな業種が太陽光発電事業に大きな関心を寄せて乗り出していることがわかる。 これまで日本では8割から9割を住宅用(主には個人設置)が占めてきたが、国際的には特殊な市場構成で、 世界では、むしろ住宅用の太陽光発電の市場に占める割合は低く、1割(ドイツやスペイン)から多くても4割(フランス)で、非住宅用の事業用太陽光発電が大勢だった。 日本で、事業用太陽光発電が大幅に増加している現状は、FiTの導入で、太陽光からの発電が、ビジネスラインに乗ってきたということだ。
2012年度から13年度へ、買取価格の低下は、10kW未満で42円から38円(余剰電力のみ、10年の買取)、10kW以上で40円から36円へと(どちらも税抜き、20年の買取)1割にもなったが、近年の太陽電池の価格低下や、経験による設置費用の低下を考えれば、4月以降も参入は続く。開発期間が短く、事業参入が他の自然エネルギーに比べて容易な太陽光にとっては、魅力ある買取価格である。
自然エネルギー市場の活性化という FiTの目的は、太陽光については達しつつあが、大きな問題がある。今まで年に数十万から多くても100万kWの導入量だった太陽光発電に、一気に1,500万kWもの導入計画(設備認定)が浮上し、はたして捌けるのかということだ。実際、運転開始した設備は10分の1の130万kW(2月末)となっていて、実務的に追いついていない状況が確認できる。実際には、認定分の半分か三分の一くらいしか運転開始しないのではないか、という見方もある。
これには複数の原因が考えられるが、一つは、電力会社との系統連系協議に起因する問題があげられる。当初は連系可能といわれたので事業を進めたが、結果的にできないと断られたケース、 または高額な工事費を要求されて、縮小や撤退含め事業計画の見直しを行わざるを得なくなったケース、などだ。前回も書いたが、当財団で行ったアンケート調査によれば、決して少なくない数の事業者が、系統連系関連が原因で、計画の断念や縮小を迫られている。例えば、北海道は、自然エネルギーが豊富なことや地代が比較的安いことなどから多くの事業計画が持ち上がっているが、すでに北電管内の系統能力を理由に買取量が決められ、事実上、上限を設けて接続拒否が行われている。
実は、北電は、FiTが導入される前から風力についてはもう買い取りできないと表明していた。そして今は、太陽光についても、接続可能なのは現在申請を受けている4分の1程度、500kW以上のものについては70万kWが上限だと言っている段階だ。人口密集率が低く、本州との連系容量も小さい北電の容量の厳しさは理解できるが、そもそも国の計画で、2030年までに、毎年、太陽光で300万kW、風力で200万kWを導入しようとしていたところに、自然エネルギーの豊富な北海道で70万kWが上限だというのはお粗末ではないか。
また、他の電力会社で、接続を拒否したり、高い工事費を要求したり、「やっぱりだめだった」と、短期間で言を翻す電力事業者があるようだ。そのような事例については、徹底した情報公開と中立的な検証が必要であり、国によるルール制定を望みたい。
太陽光事業者側の準備不足も多い。設備認定の時点では関連法案適合までは検証されないために、農地法などの関連法案をよく調べずに事業計画し、のちに断念せざるを得ないケースが多々あると聞く。
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