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自然エネルギーを選べる社会へ(2)  制度手直しの必要性

大林ミカ 大林ミカ(自然エネルギー財団ディレクター)

「コスト・メイド・イン・ジャパン」

 前から指摘されているとおり、日本の太陽光発電の買取価格は、他のFiT制度先行国と比べて高い。 自然エネルギー先進国ドイツでは、 太陽光パネルの価格の急激な低下により、年間700から800万kWと、導入が爆発的に増加する太陽光への買取価格の負担を軽減するため、ここ数年、細かく買取価格の見直しを行ってきた。 結果として、 例えば2009年から2012年では60%近く買取価格が下がってきた(現在も新しい制度の導入を議論中で、秋の国政選挙後に決定予定)。

 当財団では、現在、日本の自然エネルギーのコスト研究を実施していて、秋にも発表予定だが、太陽光でいえば、単なるPVパネルの内外価格差だけではない、流通販売形態に基づく高コスト体質がある。住宅用であれば訪問販売が中心で、上流下流が一貫しているので、消費者の選択肢はすくなかった。今、メガソーラーに参入している新規事業者も、自然エネルギーの設置事業に詳しいとは限らない大手建設業者にすべてを依頼するなど、一つ一つのコストが下げにくい形態になっている。 太陽光事業だけの特徴ではないだろうが、今の流通システムでは、国際的にパネル価格が下がってもあまり反映されない状態だといえる。

 パネルやパワーコンディショナー、地代含めた設置工事など、それぞれにかかる費用毎に、作業工程や補助制度に詳しい専門家がアドバイスすれば導入コストが三分の一になる例もある。専門家が足りない状況では、個人も事業者も自ら判断する必要があるが、比較対照のできる情報がまったくない現状なので、系統連系情報の透明化と共に、パネルやパワコンの性能や価格の比較ができる情報の整備や、工事価格について相談できる窓口の設置などを進めていく必要がある。

なぜ風力発電は?

 太陽光以外の自然エネルギー電源は、現在のところ出だしが低調だ。
諸外国では、FiTの効果が最も上がるのは、コストが安く、技術が安定している風力発電だが、日本では、ここ10数年間、系統連系がネックとなり産業としての伸びが抑えられてきた(今は太陽光にもそれがおよびはじめている状況)。日本の風力発電は、 2012年末で世界で13位の導入率で、トップの中国とは25倍の差がついている。

 特に、2011−2012年度の導入量(それぞれ、8.5万kWと9.2万kW)が下がった理由としては、FiT導入を見越して2010年に政府の補助金が廃止され、政策ギャップを生んだことが大きい。事業計画には2−3年かかるので、FiT買取を反映した活性化にはもう少しかかる。

 しかし、今後の見通しもまだはっきりしない。FiT導入後の2012年の秋に、なぜか環境影響調査対象となったことにより、事業開始まで調査に約4年(プラス、半年の配慮書手続き)、費用は1億円程度かかるようになった。事業者に言わせると、環境影響評価は必要であり、かかる費用も全体の事業費から考えれば充分払えるが、そののち系統連系してもらえないとなると1億円を捨てたことになるので、単に参入障壁が増えたことになる。風力発電は大型化に伴うコスト削減が著しいが、現状では環境アセスの負担が重いので、対象外である7,500kW未満の風力発電事業の計画が増加中という。系統連系の問題は残るが、欧米と同じような基準が適用されれば、まったく違った状況になることは間違いないだろう。

「再生可能エネルギー賦課金」の透明化の必要性

 買取料金は、電気料金を通じて徴収される「再エネ賦課金単価」で賄われる。 現在の世帯あたりの賦課金は87円で、来年は120円になるという。賦課金単価は、買取対象となる自然エネルギー電力の年間総額の見込額から、電力会社がその電力を買い取ることで負担しなくてもすんだ年間の発電コスト相当額(回避可能費用)の見込額を控除し、事務費用の見込額を加え、年間の販売 電力見込量で割ることで設定される。つまり、電力会社の回避可能費用見積もりの高低によって、電気料金に上乗せされる賦課金の額が変わる。しかし、この回避可能費用の詳しい算定方式は明らかにされていない。

 2013年5月に発表されたデータによれば、最も低い北陸電力や四国電力で4.33円/kWh、4.82円/kWh、最も高い沖縄電力や東京電力で8.19円/kWh、9.98円/kWhと、 回避可能費用の電力会社間の開きが2倍以上もある。
 現在、ほとんどの原子力発電所は動いていないので、水力と火力の割合をみてみると、確かに、回避可能費用が一番安い北陸電力は水力や、火力の中でも安い石炭の割合が高いが、その他はあまり相関関係がみられなかった。

 電力会社間でこれだけコストに開きがあるのに、電気料金はほとんど同じという状況もおかしく思える。回避可能費用が安いとしている電力会社がやたら儲かっているわけでもないだろうし、果たして自然エネルギーの電力の評価基準が電力会社間で統一された結果なのか疑問である。

 費用設定は、直接家庭の電気料金増減につながるため、算定根拠と方法については、必ず情報を明らかにしなくてはならない。海外では、実際の平均電力購入費用や、卸売電力取引市場のベースロード平均値を適用するなど、透明性を持った方法がとられている。今の日本ではこれらの情報が充分に提供されているとは言い難いが、電力システム改革が進めば、次第に平均のとれた市場形成が成されていくし、今後も一世帯あたりの賦課金総額は上昇していくので、これからの制度を考える上でも参考にすべきと考える。

 以上、早足で現在のFiTの状況をみてきた。その他にもバイオマス、地熱、水力と、それぞれの自然エネルギーが普及するための課題があるが、総じて言えるのは、固定価格制度、すなわち買取価格の高低だけで自然エネルギーを普及できるのではなく、確実に事業性を担保するための周辺状況を整備していくことが重要だということだ。まずは情報公開から始まり、関連法の改正、送電網整備などが続くべきだ。

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筆者

大林ミカ

大林ミカ(おおばやし・みか) 大林ミカ(自然エネルギー財団ディレクター)

【退任】自然エネルギー財団ディレクター。日本の環境NPO「環境エネルギー政策研究所」副所長、駐日英国大使館の気候変動政策アドバイザーなどを務めたあと10年5月から国際自然エネルギー機関(IRENA)のシナリオ&政策・地域マネージャー。IRENAは09年に設立された自然エネルギー普及のための国際機関(www.irena.org)で、本部はアラブ首長国連邦アブダビ。2011年8月から現職。※2013年7月末退任

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