2013年06月11日
政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)が大学入試センター試験を5年後をメドに廃止し、高校在学中に複数回受けられる全国共通の「達成度テスト」(仮称)を創設して大学入試に活用する検討を始めた。筆者は共通一次と呼ばれていた30年以上前から、こういう試験に大反対であったので、「やっと」という気持ちが強い。高校在学中に複数回受けられ、受けた中で最も良い成績を受験したい大学へ提出するという方式は、米国で90年間弱続いているSAT(Scholastic Assessment Test)とほぼ同じである。そこで、米国の大学で長年、教育研究に携わってきた経験をもとに、米国のSATとその大学入試への活用方法を紹介すると同時に、日本で始まるであろう「達成度テスト」(今流行の言い方でいえば「日本版SAT」)への筆者の意見を述べたい。
SATはCritical Reading, Mathematics, Writingの3つのセクションからなる。これらは、日本語で言い換えればそれぞれ、読解力、算数、作文である。毎年7回実施されている。その中で受けたいときに受けて、最もよいスコアを受験したい大学へ提出する。全米の総受験者の正解率の中間がだいたい6割〜7割くらいになる。つまり、基礎的な問題ばかりで、まじめに勉強している高校生なら8〜9割は確実に正解できるレベルのテストである。したがって、日本で今まで行われてきたセンター試験のように1点を争うようなテストとは根本的に違う。基礎的な学力を身につけているか否かを判断するための「ひとつの材料」である。
米国の大学入試では、SATのスコアはひとつの指標に過ぎない。高校の成績、これまでの活動(ボランティア活動、自由研究、コンテストなどの受賞歴、スポーツなど)、複数の推薦状、小論文、面接、などを総合して、それぞれの大学がそれぞれの大学の教育方針や運営方針に基づいて適切と判断された学生を合格にする。極端にいえば、大学への合否は、大学の「独断と偏見」により判断される。
「日本版SAT」のセンター試験とのもっとも大きな違いは、
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