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高血圧薬論文の何が不適切か?〈下〉 データに多くの誤り

浅井文和 医学文筆家

 

撤回された論文拡大欧州心臓病学会誌から撤回された京都府立医大の論文。学会誌サイトからダウンロードすると、撤回を示す「Retracted」の文字が記されていた
 研究論文が撤回になるということは、研究者にとっては信用を失う致命的な出来事だ。

 欧州心臓病学会誌のサイトから京都府立医大の元教授(2月に退職)らが2009年に発表した高血圧治療薬ディオバンの臨床研究論文のファイルをダウンロードすると、各ページには、撤回された論文であることを警告する灰色の「Retracted」という大きな文字が記されている。その下に書かれていた文字は読めない。医学論文としての価値を失ったことを示している。

 一連の論文撤回が始まったのは昨年12月のことだった。
 日本循環器学会は、この元教授らが執筆して同学会誌に掲載した二つの論文を撤回した。

判明した多くの誤り

 循環器学会の説明によると、昨年10月、論文のデータの信頼性についての指摘が学会誌編集長にあった。患者のカリウム濃度などで、検査値のばらつきが異常に大きいという指摘だった。編集長が元教授に説明を受け、第三者機関も調査に加わった。結局、データに多くの誤りがあることが判明し、論文撤回が決まった。

 なぜこのような多くの誤りが生じたのか。臨床研究を進める過程に問題はなかったのか。真相解明のため、循環器学会は京都府立医大に調査を求めた。

 現在、ディオバンの臨床研究で論文発表した5大学で調査が続けられている。京都府立医大のほか、東京慈恵会医大、千葉大、滋賀医大、名古屋大だ。

 いずれも、ディオバンの発売元であるノバルティス日本法人の元社員が研究にかかわっていた。ただ、関与の度合いは大学ごとに違うようだ。

 ノバルティスの社内調査によると、

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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 医学文筆家

元朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。退社後、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。公衆衛生学修士(専門職)。日本医学ジャーナリスト協会理事。日本専門医機構理事。

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