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今、アフリカ支援に求められているのは何か

山極寿一 京都大学総長、ゴリラ研究者

 このたび、横浜でTICAD(アフリカ開発会議)が開かれ、安倍総理は、今後5年間で3兆2000億円を支援する考えを表明した。合わせて、日本は資源を収奪するのではなく、天然資源の恵みが経済成長につながっていくような支援をすると述べた。その具体的な内容として、アフリカ諸国から若者1000人を企業インターンとして招くほか、農業や建設技術を伝授して5年で3万人の人材を育成するという。

 これはすばらしい提案だと私は思う。今までアフリカ諸国は援助という名の下で、資源の乱獲に苦しんできた。1960年代に次々に独立を達成したものの、経済の破たんに直面し、植民地時代の宗主国に資源開発の主導権を握られたままだ。最近はアジアの大国となった中国がかなり強引な開発援助をおこなっている。幹線道路や重要な建物の建設を請け負い、低価格で受注する代わりに、鉱山開発や森林伐採、農地買い上げの権利を手に入れている。土地の利用や雇用条件をめぐって各地で労働争議が起こり、アジア人に対する反感は募るばかりだ。安倍首相の発言はこの中国の動きを強く意識している。

 ただ、人材育成は並大抵のことではない。小規模だが、私はこれまで20年余りの間、アフリカで人材育成に携わってきた。1980年代にゴリラの研究と保護活動には同じ目的を共有する現地の人材育成が不可欠だと痛感したからだ。以後、コンゴ民主共和国で若い研究者をリクルートしていっしょに調査活動を展開し、博士の学位をとらせた。学位取得後、彼はゴリラの保護を推進する国際機関に職を得て、現在は本国の研究所で指導的な研究活動に携わっている。

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