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 パイオニアやガリレオ、カッシーニなど、米航空宇宙局(NASA)の独壇場だった木星以遠の惑星探査にいよいよ欧州宇宙機関(ESA)が乗り出す。その記念碑的な木星ミッションJUICE(2022年打ち上げ)に載せる観測装置がこの春に選定された。このミッションは日本の科学者にとっての初めての木星体験でもある。日本の宇宙科学の重要な一里塚となるこの計画について紹介したい。

拡大JUICE木星探査機(2022年打ち上げ)の想像図。欧州宇宙機関提供(©ESA/AOES)*

 木星探査は多くの太陽系科学者の夢だ。木星そのものが巨大惑星として興味深いだけでなく、木星をとりまく衛星が、火山があるイオ、液体の海が広がるエウロパ、固有磁場を持つガニメデなど、内惑星(水星、金星、地球、火星)と類似した性質を持っているからだ。そればかりか、エウロパ、ガニメデ、カリストには氷大地が広がる。これは遠方の惑星・衛星の特徴だが、太陽系では木星系まで行かないと見られない。つまり木星系は「ミニ太陽系」ともいうべき未知と魅力にあふれる対象なのだ。

 問題は木星探査に必要な宇宙技術で、これが困難すぎて欧州も日本も今まで手を出せなかった。

 宇宙技術とは何か。気温や気圧(大気圏での概念である気温とか気圧という言葉を宇宙で使って良いかどうかはさておき)だけでなく、宇宙線対策や放電対策まで考えなければならない過酷な環境で、探査機本体と観測機器を思い通りに動かし、大量の正確な観測データを取得する技術である。そこには、電力源の確保、緻密な噴射コントロール、光ですら何分何十分もかかる遠隔地との通信、そんな場所での環境の急激な変化への自律的対応など、多くの課題が立ち塞がる。それら全てを限られた重量で実現しなければならない。

 太陽系探査では、こういった多くの宇宙技術の結集が不可欠となる。だからこそ、大国としての自信をつける一里塚として、どの国も予算を投じてきた。冷戦時の米ソの宇宙開発競争に始まり、ソ連崩壊後は日本と欧州連合(正確にはESA)がほぼ同時に手掛け、近年になってからは中国とインドが次々に目指してきた。彗星・小惑星や火星、金星、そして太陽に近く熱過ぎるために一番難しい水星。

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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