2013年06月19日
安倍内閣が打ち出した「職務発明制度の抜本的見直し」の方向性を問うていきたい。果たして、職務発明にかかわる権利を発明者帰属から会社帰属に変えると、日本企業の産業競争力があがるのか? 「あがる」と主張する側の根拠の一つは、日本と同様の職務発明制度を持っている国は数少ないという点だ。そして、イノベーション大国の米国には、そもそも職務発明制度がない。
日本と似た制度を持つのはドイツだ。ただ、適切な対価について詳細なガイドラインが公表されている点が違う。職務発明は、特許庁と労働省の共管である「従業者発明法」で規定されている。ドイツは労働組合が強いので、こういう仕組みになっているそうだ。同様の制度を韓国も持っている。
対極にあるのが、スイスだろう。政府の知的財産政策ビジョンに記載されている国際比較によると、「使用者は雇用契約により、従業者によるすべての発明の権利が与えられる」とスイス債務法に定められている。追加的に従業員が請求できる補償についての定めはない。
英国やフランス、ロシア、オランダ、中国は、権利は会社帰属としつつ、対価の請求権を認めている。
米国では、職務発明について法律上の取り決めはないが、特許の権利はつねに発明者に帰属するという意味では、日本と同じ発明者主義だ。しかし、職務発明という概念はなく、従業者が発明した場合にどうするかは雇用契約に委ねられる。一般的には、対価込みの給与額が示されることが多いという。
対価込みの給与ということは、発明をする人には高い給与を払うということだろうと思っていたら、「とんでもない」と中村修二氏の裁判の代理人である升永英俊弁護士に一喝された。「就職するときは、
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