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  日本は、世界第3位の地熱資源国であるといわれている(賦存量2347kW)。資源量に比べて遅れてきた地熱利用促進を図るために、新たな再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)で27.3円/kWhが認められた。しかし、最大の課題は、国立公園内に立地する場合の自然保護との両立である。

 その具体的な事例を、北海道大雪山国立公園層雲峡白水沢地域地熱資源開発の現状に見ることにしたい。地元の上川町では、1960年代から地熱開発の長い歴史がある。はじめは、層雲峡温泉の温泉源拡大のための調査がきっかけで、北海道地下資源調査所の1965年から1972年の正式な調査により白水沢地域に熱源が確認された。

 しかし、1972年に環境庁と通産省との「覚書」が出され、国立公園内の開発は6つに限定され、白水沢は対象外となった。その後、1988年に発電以外の熱水利用計画として、上川町により上川町大雪エネトピア計画が立てられたが、1996年に地熱開発計画は一旦凍結された。このように、この地域には地熱開発調査の長い経緯があり、最近になって急に出てきた問題ではない。

 基本的な問題は、国立公園内の景観保護、環境保全と、再生可能エネルギーとしての地熱利用の在り方について、国の方針が不明確なことである。環境省内でも、国立公園管理を担当してきた自然保護局と、温暖化対策を担当する地球環境局との調整が不十分である。ドイツの場合のように、再生可能エネルギーの開発の責任が環境省にあるということにもなっていない。

 そこに2011年3月11日の事態が起きて、状況が変化し、1年後の2012年3月に環境省から「国立国定公園内における地熱開発の取扱について」の通知が出されて、一部条件付き緩和となった。その内容は、「特別保護地区」と「第1種特別地域」は、調査を認めるものの、傾斜掘削は認めない。「第2種特別地域」と「第3種特別地域」については、条件付かつ個別判断によって地熱開発を認めるか判断する。その条件とは、「関係者との地域における合意の形成」、「地域への貢献」、「情報開示」、「専門家の活用」などである。「優良事例」であれば、第2種でも第3種でも開発を認めるので、白水沢がその候補となったのである。上川町のプロジェクトでは、地元の協議が行われ、事業者(丸紅)による調査が始まったが、多くのクリアすべき障害と条件がある。

 それらの制約条件とは、1)国立公園内の制約、2)地形、湯量、温度、泉質、3)自然保護団体の反対、などである。事業予定者である丸紅の負担による、ステップ1の調査の結果を受けて、ステップ2の環境影響評価がある。地元の資金を集めて、地熱開発に投資するには、あまりにもコストとリスクが高すぎるという。調査開始から発電まで10年程度かかる息の長いプロジェクトである。地元の温泉業者の関心は、温泉源への影響であるが、地表調査の水成分分析によって、温泉と同じ温泉源であるかどうか、は判断できるという。

 日本国内には、地熱発電所が18か所稼働しており、そのうち国立・国定公園内は10か所ある。北海道では道南の森町に北海道電力の地熱発電所が操業しているが、国立公園内の立地ではない。 ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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