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 七夕伝説が人の心をとらえるのは、恋人同士の年に1度だけの逢瀬というロマンスと、その舞台が天の川を挟んで夏空に輝く2つの星、織女星(ベガ)と牽牛星(アルタイル)に結びつけたロマンにあろう。魅力はそれだけではない。地球上空の現象を専門とする私にとっては、「七夕伝説がどのような大気現象や超高層現象と結びついて生まれたか」という謎への挑戦に興味がそそられる。

 伝説や想像上の動物・怪現象を、実際の現象と結びつけて説明するのは地球科学の楽しみの一つだ。現代科学の知識のなかった時代に珍しい自然現象に出会った人々の立場からすると、彼らが類推できる範囲で、観察を記したに違いないからだ。たとえば、地震時にナマズが騒ぐことがあるのを見て、親玉ナマズを想像したといった類いだ。

 山よりも高い場所の大気現象や超高層現象の場合は、天文部の役人に怪現象として記録される一方で、民間レベルでは、空を飛ぶ想像上の動物や、天に住む人々の活動と思われたはずだ。たとえば、天狗(てんぐ)、鳳凰(ほうおう)、龍、天界の仙人たち活動。それら想像上の動物や活動のほとんどに、対応する自然現象があってもおかしくはない。そういう意味では文化人類学と地球科学は密接な関係があるともいえよう。いや、そんな理屈を抜きしても、この種の想像をめぐらせることは、現実の科学の厳密さに息の詰まる思いをしている科学者にとって清涼剤となる。その一例として、七夕に関連しそうな自然現象を紹介しよう。

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 七夕伝説の肝は、2つの星が年に1度だけ太陰暦の7月7日前後、すなわち立秋過ぎに天の川を越えて出会うところだ。出会うと言っても星が動くはずがない。従って、もしも七夕が自然現象と関係しているなら、天の川という障害が、1年のうちの立秋前後の1晩だけ無くなるような現象ということになる。具体的には、川が干上がったり凍結したりするように見える天文現象と、川を舟で渡ったり川に橋を架けたりするように見える発光現象が挙げられよう。前者の候補としてすぐに思い浮かべられるのは白夜だろう。後者の候補には ・・・ログインして読む
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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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