2013年07月11日
復興庁の参事官がツイッタ―で市民団体などを中傷する書き込みを繰り返したり、飛ぶボール問題に対してプロ野球連盟が非常識な対応を続けたり、自民党政調会長が被災地の方々の感情を逆なでする不適切発言をしたり、6月は、コミュニーケーションについてあれこれ考えさせられる出来事の多い1カ月だった。この面々の言動には、共通点がある。それは、多くの人から信頼され協力関係を築かなければ果たせない要職にある人々が“上から目線”で事を処したことである。この面々と対照的なのが、DJポリスだった。日本のエリートは、DJポリスに学ぶべきである。
DJポリスとは、TVやネットで見られた方も多いだろうが、日本がワールドカップのブラジル大会の出場権を獲得した夜、大活躍した男女2人の警察官のことだ。彼らは、騒乱が危惧された渋谷の街で軽妙なアナウンスで首尾良く群集の誘導を果たしたことで話題になった。
あの夜も、これまでのように、渋谷駅前に集結した大群が信号機によじ乗って叫んだり、道を塞いで傍若無人に振る舞ったり、若者どうしや警備の警官と小競り合いを起こして混乱するかと案じられていた。
しかし、彼らは、
「サッカー日本代表は、世界から“ルールを守るフェアプレーの精神”が高く称賛されているチームです。12番目のチームのメンバーとも言えるサポーターの皆さんもフェアプレーの精神でルールを守って下さい」
「私もサッカーファンの一人であり、お祝いしたい気持ちは皆さんと同じです。おまわりさんたちも、喜んでいる皆さんを取り締まりたくて、ここに来ているわけではありません。ルールは守って、皆さん楽しくお祝いしましよう」
等と、威圧的なところは一切なく、群衆に向かって人間味溢れる呼びかけを懸命に続けた。プロレスラーのラッシャー木村さんのマイクパフォーマンスを彷彿とさせる素朴で温かみのある語り口調に、群衆からは「おまわりさん(いいぞ)」コールも湧き起こった。見知らぬもの同士がハイタッチして喜びを分かち合っている人々の姿は微笑ましくすらあった。
こんなハッピーな結果で終わったのは、ポリスが人々に上から目線で指示や警告をするのではなく、人々の気持ちを理解しようとしながら呼びかけたからだと思う。だからこそ、その言葉が一人一人の心に届き、彼らの理性を呼び覚まし協力関係を築くことに成功したのだ。
それに対し、冒頭にあげた人たちの言葉はどうであったか。「一人一人の理性を呼び覚まして協力関係を築く」のとは正反対の結果を引き起こした。
『エリートとは、他人よりも自分が優れていると思い込んでいる気取り屋ではなく、自分に多くを要求し、自分の上に困難と義務を背負い込む人である』とは、スペインの哲学者オルテガの名言だ。より多く、より多様な人々の意見を汲み取れる度量のあるタフな人物が世の中の要職に就いてくれなければ、多くの人にとって良い世の中になりようがない。だからといって、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください