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TPPで急浮上!著作権保護は死後70年間に?

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 著作権の保護期間を権利者の死後50年から70年に延長する方針を日本政府が固めたと日本経済新聞が9日朝刊1面で報じた。4月の環太平洋経済連携協定(TPP)の日米事前協議で、日本の制度を米国に合わせる案を示したのだという。甘利明経済財政担当大臣は9日の記者会見で「全部誤報だ」と述べたが、米国がこの問題に関心を持ってTPP交渉に臨むのは間違いない。これまで国内の合意が得られないできたこの問題は、日本の文化をどう豊かにしていくかに関わる問題である。いや、世界の文化をどう豊かにしていくかを見据えて、まさにTPPのような場で意見を戦わせるべき問題だろう。仮に日本側交渉関係者が「米国と同じにしないわけにはいくまい」などと予断を持っているとしたら、とんでもないことだ。政府は、TPPに関する意見を7月17日17時までメール募集している。あなたの意見も政府に送ってみませんか。

 世界最初の著作権法は、1710年に制定された英国の「アン女王法」だそうだ。それまで、作品の印刷の独占権は出版業組合が持っていた。増刷されても作者には何の見返りもなかった。それを、作品の発行から一定期間(14~28年)は印刷の独占権を作者に与えるようにした。そうすることで「学問を推進する」のが目的だった。

 同様の法律は他の国にも広まった。1886年には、著作権に関する基本条約「ベルヌ条約」ができ、国際的に共同歩調を取る基盤ができる。そして、著作権の保護期間は次第に延びていく。権利保護の起点は、「作品発行時」から「権利者の死後」に変わり、90年代に入ると欧州各国は「死後70年」に足並みをそろえた。米国でも98年に新しく法律をつくって「死後70年」に延長した。しかし、このとき、ハリウッドなど豊富なコンテンツを持つ米国にとって期間延長は「自国産業保護」に直結するにもかかわらず、「新たな作品の創作が不自由になり、かえって文化を停滞させる」と強い反対運動が起こり、憲法訴訟にまで発展したのだった。結局、ミッキーマウスが最初に登場した映画の著作権が2003年に切れるのを見越して法律が成立。この法律には「ミッキーマウス保護法」の異名がついている。

 日本は

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