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 生命科学と情報科学双方の先端分野に大きな貢献をしてきたものとして「マウス」を挙げることができよう。かたやラットと並び、モデル生物として創薬や治療法の開発に大活躍しており、かたやコンピュータを操作するインタフェースとして無くてはならないものの一つとなっている。

 後者のマウスの発明者として知られるダグラス・エンゲルバート博士が、この7月2日に世を去った。ロボットやコンピュータ技術を通じて人間と機械の関係を研究する筆者は、この報に接し往年のヒーローが亡くなったかのような寂寥感を覚えた。

 エンゲルバート博士は1962年に”Augmented Human Intellect”(人間の知性の拡張)と題した論文を発表した。そして1968年にサンフランシスコで自ら発明したマウスを使った一大デモンストレーションをした。 その模様の動画は以下のURLから見ることができる。
http://sloan.stanford.edu/mousesite/1968Demo.html

 デモは、ビデオ会議やワードプロセッサなど、現在当たり前のように使われている技術が宝石箱のようにギッシリとつまったものであり、集合知により諸問題を解決できると説いた。その模様は今でも「全てのデモの母」として情報科学の研究者の間で伝説となっている。

拡大最初のマウスの特許の図面。http://www.dougengelbart.org/about/patents.html

 1967年に出願されたマウスの特許の図面を見ると、現在の使い方と異なり、ケーブルがネズミの尻尾のようにマウスの手前に垂れているのがわかる。位置検出のセンサも現在とは違うが、概ね現状のマウスとほぼ同様の外見となっていることに驚かされる。

 さて、マウスの発明以前にも「ライトペン」と言われる画面を直接タッチして入力する方式のインタフェースが開発されていた。現在の小型ゲーム機やタブレット型コンピュータにも 用いられているペン入力方式の草分けである。ではマウスの価値はどこにあったのだろうか。

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筆者

稲見昌彦

稲見昌彦(いなみ・まさひこ) 東京大学先端科学技術研究センター教授

1972年東京生まれ。99年東京大学大学院工学系研究科修了博士(工学)。マサチューセッツ工科大学客員科学者、電気通信大学教授、慶応大学教授などを経て現職。強化人間、自在化技術、エンタテインメント工学に興味を持つ。光学迷彩、動体視力増強装置など、空想と科学を繋ぐ技術を多数開発。【2017年9月WEBRONZA退任】

 

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