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環境教育と善意のEM投入 その1

片瀬久美子

  自然環境は、そこに生息する様々な生物による複雑で絶妙なバランスによって保たれています。 例えば、河川の水に含まれる有機物などの栄養分(生物の死骸も含む)を食べる微生物がいて、その微生物を食べるプランクトンなどがいて、それを食べる魚がいて…といった形の食物連鎖が成り立っています。

 さらに藻類や貝類、昆虫類など様々な生物が複雑に食物連鎖を通じて関係しており、そのバランスが保たれていれば水中の酸素量や栄養成分などは一定の範囲の変動に保たれ、多少の環境変化にも安定してていられます。ですが、一度大きくバランスが崩れてしまうと、簡単には回復できなくなってしまいます。

 また、外来生物の流入により、在来生物の生息が脅かされて減少・絶滅することで、生物全体としての多様性が失われてしまうといった問題もあります。外国産の生物が国内に入り込む他に、同じ国内でも、ある地域の種が別の地域に新たに入り込むことにより、その地域の固有種が失われてしまう場合もあります。過去に問題となった例としては、その地域の固有種とは異なるホタルやメダカ、ヨシなどが放流や移植されたケースなどがあり、人為的に別の種を持ち込むことは、できるだけ避けなければなりません。

 「環境教育」は、こうした自然環境保護の大切さを教えるのが目的の1つであると思いますが、環境を保護したり、環境悪化を解決する方策として迷走した活動が行われていることがあります。

 「環境教育」についての問題指摘をした書物としては『ちょっと待ってケナフ!これでいいのビオトープ?』(上赤博文著 地人書館)が良書です。ケナフ(アフリカ原産の植物)は、今でも学校の「環境教育」の教材としてよく使用されています。最近では、EM(有用微生物群)という、沖縄で開発された微生物資材を培養した液やEMで発酵させたボカシ(有機肥料の一種)を土に混ぜ込んで丸めた『EM団子』やEMの培養液である『EM活性液』を大量に河川や海に投入する活動が一部の小中学校の「環境教育」の中で行われており、新聞やTVでもその様子が何度も取り上げられています。

 EM団子の河川や海への投入は、EM提唱者の呼び掛けにより、毎年『海の日』(今年は7月15日)に全国的に投入行事が開催されており、一般の人達への認知度も高まってきている様子ですが、こうした行事に参加する前に一度立ち止まって考えて頂きたい事があります。 ・・・ログインして読む
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筆者

片瀬久美子

片瀬久美子(かたせ・くみこ) 

【退任】サイエンスライター。1964年生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。専門は細胞分子生物学。大学院進学前に11年間、企業の研究員として、バイオ系の技術開発、機器分析による構造解析の仕事を経験。著書に『放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち』(光文社新書:もうダマされないための「科学」講義 収録) 、『あやしい科学の見分け方』(RikaTan 2012年1月号収録)など。2013年8月退任。

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