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環境教育と善意のEM投入 その2

片瀬久美子

■公的機関は、EMの河川・海への投入をどう評価しているのか

 EMについては、複数の公的機関から河川や海への投入に否定的な見解が出されています。肯定的な見解を出している公的機関は見つかりませんでした。

 中国新聞:EM菌「推進しません」広島県 (2003年9月13日)
 広島県は、海や川の浄化に自治体や環境団体が使っている有用微生物群(EM菌)の利用を推進しない方針を決めた。「室内実験で水質の浄化作用が全く認められなかった」というのが理由だが、普及団体などには反発も広がっている。
 県保健環境センター(広島市南区)が今年二月から実験。市内の海田湾(南区)や魚切ダム(佐伯区)、八幡川上流(広島県湯来町)の三カ所で採取した水をそれぞれガラス瓶に入れ、EM菌を混ぜて二カ月間、水質の変化を調べた。水はどれも、汚れを示す生物化学的酸素要求量(BOD)や化学的酸素要求量(COD)の数値が上昇。国の環境基準を上回ったまま、戻らないケースもあった。
 魚介類に悪影響を及ぼす窒素やリンの数値も上がり、赤潮を生むアオコの増殖も抑えられなかった。既に岡山県や福井県も同様の実験を行い、結果も同じという。こうした実験結果を受け、広島県は六月に「県としては、EM菌利用を推進しない」と決め、県内七カ所の地域事務所に通知した。

 福島民友:県が初の見解「EM菌投入は河川の汚濁源」 (2008年3月8日)
 県は、河川や学校で水質浄化の環境活動に使われているEM菌(有用微生物群)などの微生物資材について「高濃度の有機物が含まれる微生物資材を河川や湖沼に投入すれば汚濁源となる」との見解をまとめ7日、郡山市で開いた生活排水対策推進指導員等講習会で発表した。県環境センターが、市販のEM菌など3種類の微生物資材を2つの方法で培養、分析した結果、いずれの培養液も有機物濃度を示す生物化学的酸素要求量(BOD)と化学的酸素要求量(COD)が、合併浄化槽の放流水の環境基準の約200倍から600倍だった。

 朝日新聞:EM菌効果の「疑問」、検証せぬまま授業 「水質浄化」の環境教育/青森県 (2012年7月3日
 県東青地域県民局は2004年から、管内の希望校にEM菌を無償で提供し、実践を支援している。提供開始にあたり、県はEM菌による浄化活動が行われている川で1年間、水質を調査。だが、顕著な改善は確認されなかったという。(中略)
 岡山県環境保健センターは1997年度、EM菌は水質浄化に「良好な影響を与えない」と報告。実験用の浄化槽にEM菌を加えて600日間観察したが、EM菌のない浄化槽と同じ能力だった。広島県も03年、同様の報告をしている。
 三重県の05年の報告は、海底の泥の浄化に「一定の効果があると推定」した。湾内2カ所の実験で、1カ所で泥中の化学的酸素要求量(COD)が減少したためだ。だが、水質に関しては効果がなかった。
岡山県の検証に参加した職員は「川や池でも試したが効果はなかった。EM菌が効く場合が全くないとは言い切れないが、どこでも効果が期待できるようなものではない」と指摘する。

 以上、紹介した広島県・福島県・岡山県・三重県の公的な試験の結果からは、期待とは逆にEMは河川や海の汚染源になってしまう可能性が指摘されており、EM団子やEM培養液の投入は環境保全の意味を考え合わせても、安易に河川や湖・海などに「どんどん放り込む」ことはせずに、もっと慎重になった方がいいでしょう。 ・・・ログインして読む
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筆者

片瀬久美子

片瀬久美子(かたせ・くみこ) 

【退任】サイエンスライター。1964年生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。専門は細胞分子生物学。大学院進学前に11年間、企業の研究員として、バイオ系の技術開発、機器分析による構造解析の仕事を経験。著書に『放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち』(光文社新書:もうダマされないための「科学」講義 収録) 、『あやしい科学の見分け方』(RikaTan 2012年1月号収録)など。2013年8月退任。

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