石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)
朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
だが、世界に目を向ければ、強大な台風や激しい干ばつなどの異常気象が頻発している。最近も欧州は洪水に、米国は熱波に見舞われた。途上国には深刻な被害をもたらしている。米ハワイ・マウナロア観測所では、二酸化炭素(CO2)の大気中濃度が400ppm(0.04%)を超え、そのテンポは加速している。日本も震災復興を理由に、いつまでも温室効果ガス削減から逃れていることはできない。
現場を預かる地方自治体には、「国が目標を決めてくれないと動けない」というおかみ頼みのところがある一方で、「国にまかせてはいられない」と独自の政策を掲げて動き出す元気なところも増えている。こうした自治体は、原発事故を通じてエネルギーの自立の必要を改めて痛感したようで、表裏の関係にある再生可能エネルギーの導入拡大にも熱心だ。昨年7月に始まった固定価格買い取り制度を利用すれば、地域経済の活性化にも役立つ。
環境省の昨秋の調査では、基準年度にばらつきはあるものの、20年度に25%以上の削減目標を掲げるのは15都府県=表参照。
この中で、絶えず国の尻をたたいてきた代表が東京都だ。高度成長期の公害対策や2000年前後のディーゼル車規制と同様、地球温暖化問題でも2010年に国内で初めて温室効果ガス総量削減義務とキャップ・アンド・トレード型排出量取引制度を導入した。「25%削減」についても、「国より先に都が決めた」と言い、国が目標を取り下げた後も変えるつもりはない。
東京都の環境行政を長年にわたって主導し、7月で退任した大野輝之・前東京都環境局長に、総量削減義務が本格的に始まって3年余りの経験を聞いた。
――日本で初めての温室効果ガス総量削減義務とキャップ・アンド・トレード型排出量取引制度が本格的に始まって3年余りがたちました。
大野 震災以降、日本では気候変動についての議論があまり盛んではなくなった。しかし気候変動の危機は、この2年間にも一層明確になりつつあります。議論が少なくなったことは、必ずしも対策の後退を意味しません。3.11以降、エネルギー問題への対応として、かつてないほど省エネ・節電対策が進み、再生可能エネルギーの本格的な普及が始まりました。この二つは、主要な温室効果ガスであるCO2の排出削減にとって最も重要な取り組みです。その意味では、温暖化対策が大きく進んだとも言えます。
――都の総量削減義務は、2011年夏の「電力使用制限令」の際にも役立ったと聞きます。
大野 都の制度は前年に始まりました。その経験から
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?