メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「南部コロキウム」とジャンニさんとの再会

内村直之 科学ジャーナリスト

 7月の終わり、私はアブラゼミの声があふれる大阪・豊中の大阪大学キャンパスを歩いていた。目的は、この日、理学部で開催される「南部コロキウム」を聞くためである。
南部コロキウム=大阪・豊中市の大阪大学理学部で拡大南部コロキウム=大阪・豊中市の大阪大学理学部で

 2008年にノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎さんだが、アメリカ国籍を取られシカゴ大学を本拠とされているせいか、南部さんのお仕事を顕彰するような施設、賞などはついぞ聞かない(中学・高校生に与える賞に名前を冠しているのはあるようだ)。日本人ノーベル賞受賞を記念して、いくつかの大学で建っている箱モノは多いのになあ……と思っていた。

 こんな話が耳に入ってきた。南部さんの日本の自宅も近く、特別栄誉教授ともしている大阪大学では、最新の物理理論についての発表を聞きながら自由に交流しようという場を、南部さんの名前を冠して「南部コロキウム」としようと決めたというのである。素粒子を説明する最新の理論は、素粒子を「ミクロの弦」と考える超弦理論であるが、それは1970年の南部さんの理論がひとつの「源」であった。超弦理論を専攻する大阪大学理学部の橋本幸二教授の声がけで、コロキウムの具体的な内容が決まっていった。

 第1回の南部コロキウムに登場したのは、イタリア・ローマ大学教授の統計物理学者ジョバンニ・イオナ=ラシニオさん(愛称はジャンニ)であった。南部さんと50年以上のつきあいがあるジャンニさんが来るなら、それではなおさら、いかないわけにはいかない、と私は思った。

・・・ログインして読む
(残り:約1719文字/本文:約2345文字)


筆者

内村直之

内村直之(うちむら・なおゆき) 科学ジャーナリスト

科学ジャーナリスト。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程満期退学。1981年、朝日新聞入社。福井、浦和支局を経て、科学部、西部本社社会部、科学朝日、朝日パソコン、メディカル朝日などで科学記者、編集者として勤務し、2012年4月からフリーランス。興味は、基礎科学全般、特に進化生物学、人類進化、分子生物学、素粒子物理、物性物理、数学などの最先端と科学研究発展の歴史に興味を持つ。著書に『われら以外の人類』(朝日選書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

内村直之の記事

もっと見る