2013年08月05日
研究不正のニュースが相次いでいる。
東京慈恵会医科大学が7月30日、製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバン(一般名・バルサルタン)に関する臨床研究論文でデータが人為的に操作されていたと調査結果を発表した。
京都府立医科大学も7月11日、ディオバン臨床研究論文でデータ操作があったと発表している。
分子生物学研究では、東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授グループの論文43本について、東大の調査委員会が改ざんなどの問題を指摘して「撤回が妥当」とした。
不正で日本の研究への信頼は損なわれている。見過ごせない事態だ。
慈恵医大の論文は2007年、英医学誌ランセットに掲載された。
同医大の研究グループが3081人の高血圧患者の協力を得て実施。ほぼ3年の追跡調査の結果、ディオバンを使った患者は他の薬を使った患者よりも脳卒中や狭心症が起きるリスクが4割下がったという内容だ。血圧の平均値はディオバンを使った患者も他の薬の患者もほぼ同じだった。血圧を下げる以上にディオバンには病気を防ぐ効果があるということで注目された。
しかし、慈恵医大の調査で、血圧値が人為的に操作されていたことが判明した。実際には、ディオバンを使った患者と、別の薬を使った患者とで差があった。ディオバンを使った方が血圧が低かったが、論文では差がないように見せかけていた。調査委員会は「科学論文として信頼性を欠く」として、論文の撤回が妥当と判断した。
ランセットは米国のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンと並んで世界で最も権威ある医学誌だ。その論文撤回となると医学界への衝撃は大きい。
京都府立医大は同様に約3000人の患者の協力を得たディオバンに関する臨床研究論文の不正だがデータ操作の手法は違う。
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