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「研究不正」をどう防ぐか<下>

片瀬久美子

<上>では、研究不正が行われている状況とその背景について書きました。続く<下>では、どうすれば不正を減らせるのか、第三者機関による監視の必要性も含めて考えます。

■不正の発見をどうするか

 日本には積極的に論文不正を監視して調査する公的な機関はありません。大学などの研究機関に設けられる調査委員会は、申し立てがないと組織されて動き出せないなどの制約があります。

 <上>で紹介した「捏造問題にもっと怒りを」のコメント欄では、インターネット上で論文捏造の指摘をしてきた人物による意見が述べられており、参考になると共にとても考えさせられます。このサイトでは、論文捏造を検証して必要があれば注意勧告する第三者機関の設置の必要性についても話し合われています。研究の監視と研究者への懲罰を科学コミュニティーの外部に委ねてしまうことで、研究の自由の侵害に発展する恐れがないかと危惧する意見もあります。

 しかし、学会などの科学コミュニティーでは、研究成果を発表し情報交換する場の提供が主であり、不正行為の摘発などは無理との意見が出されています。学会では不正発生後の対処を担当するよりも、不正が出ない様にしていく為の方策を話し合い、政府機関に改善要求を出すなどの提言をしていく事が役割として相応しいのかもしれません。

 もし、研究不正を監視する第三者機関の設置がなければ、最近多くなっているインターネット上で研究不正等を追及するためのサイトやブログが、今後も活躍することになるでしょう。これらサイトによって不正が告発された件数は、2011年以降から顕著な伸びを示しています*7 )が、ボランティアとして行ってくれる人達にばかり頼るのも問題があると思います。不正を見逃せなくなった人がやむを得ず告発サイトを立ち上げるケースが多いのですが、こうした場合、証拠を揃えて提示するには手間と時間を要する上に、強い逆恨みなどを受けることも予想され、個人でやり続けるには負担が大きくなります。 ・・・ログインして読む
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筆者

片瀬久美子

片瀬久美子(かたせ・くみこ) 

【退任】サイエンスライター。1964年生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。専門は細胞分子生物学。大学院進学前に11年間、企業の研究員として、バイオ系の技術開発、機器分析による構造解析の仕事を経験。著書に『放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち』(光文社新書:もうダマされないための「科学」講義 収録) 、『あやしい科学の見分け方』(RikaTan 2012年1月号収録)など。2013年8月退任。

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