2013年09月06日
半藤一利他著『零戦と戦艦大和』(文春新書)を知人に勧められて読み、実に実に驚いた。日本の半導体(だけでなく薄型テレビも)は、さまざまな点で、まさに零戦とそっくりだったからだ。
零戦は登場したとき、抜群の格闘戦性能と航続距離を持っており、文字通り“無敵”の戦闘機だった。開戦当初、米国戦闘機の零戦対策は、「零戦を見つけたらひたすら逃げること」だったという。
ところが、戦争が激化し終盤になると、零戦の無敵性が失われていく。徹底的に研究され、その弱点が露呈したからだ。零戦は高高度性能、高速性能、防弾性能に問題があった。米国の戦闘機グラマンは、この零戦の弱点を突くために、高高度からの一撃離脱戦法で攻撃し、零戦を次々に撃墜していった。
とくに、零戦の防弾性能の貧弱さは、致命的だった。海軍が要求する通りの(当初不可能と思われた)格闘戦性能や航続距離を実現するためには、機体を極限まで軽くする必要があった。そのため、パイロットを守る防弾壁が設置されなかったのである。その結果、何より貴重なベテランパイロットを、日本海軍は次々と失うことになった。
かつて日本の半導体メーカーは、顧客のメインフレームメーカーから、「壊れない半導体メモリDRAMつくれ」と言われ、本当に25年保証の高品質DRAMをコスト度外視でつくってしまった。また、ルネサスも、トヨタから不良ゼロの車載半導体(マイコン)を要求され、検査に次ぐ検査を行って、会社が赤字を垂れ流そうとも、ひたすらトヨタの言う通りに高品質マイコンをつくってきた。
私はまずここに、日本半導体と零戦の共通性を垣間見る。零戦は海軍の言うとおりの仕様 でつくられ、DRAMやマイコンはメインフレームメーカーやトヨタの言うとおりの品質で(コスト度外視で)つくられたからだ。
また零戦の最大の問題は、
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