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イプシロンロケットー直前中止は珍しいことではない

山崎直子 宇宙飛行士

 8月27日午後に日本の新型固体ロケット「イプシロン」初号機の打ち上げが予定されていましたが、発射19秒前に異常が自動検知され、中止されました。原因究明と対策を図った後、最短3日後に再打ち上げを目指すと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は発表しています。鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所周辺には約1万5000人の方が見学に来られ、ネット中継を見守っていた方も数万に及びました。スペースシャトルの打ち上げの際もそうでしたが、こうして見守って下さる沢山の方々の想いに支えられていることを痛感します。私もネット中継を見守っていた一人で、打ち上げ延期は残念ではありますが、万全を期して再挑戦して欲しいと応援しています。

拡大打ち上げ予定時刻を過ぎてもイプシロンの姿は見えず、空を見上げる見学者たち=27日午後1時48分、鹿児島県肝付町の内之浦漁港、溝脇正撮影

 今回の中止の原因は、ロケット第3段に搭載された姿勢センサーのデータが正常値よりもわずかにずれていると地上側のコンピューターが検知したためです。JAXAが確かめたところ、ロケット自体は発射台に正常に固定されており、姿勢に異常はありませんでした。センサーのデータを算出するロケット内のコンピューターに異常があったか、あるいは、ロケットから地上のコンピューターにデータが送られる際に異常があった可能性があるとみて調べています。異常検知の閾値の設定の仕方が厳しすぎたという可能性もあるでしょう。初号機なので、種々の安全基準をとくに厳しくしているとのことです。

 ロケットの打ち上げは一発勝負という厳しい世界です。一度発射台を離れたら、やり直しがききません。また、搭載されるペイロード(観測機器などの「荷物」のことです)、投入軌道、温度や風などの周囲の環境条件も、毎回異なります。同じ設計図面に基づいて製造しても、1機ごとに差が生じるのは他の製品でも一緒ですが、打ち上げまでの保管期間中の材料の自然劣化、あるいは試験をすることによる変化も微小ながらあります。それら毎回異なる諸事情を考慮し、事前に出来るだけシミュレーションや検査をしつつ、それでも見つからなかった事象は、打ち上げカウントダウン時の点検でチェックしていくことになります。

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筆者

山崎直子

山崎直子(やまざき・なおこ) 宇宙飛行士

宇宙飛行士、立命館大学客員教授、女子美術大学客員教授。東大工学部航空学科修士課程修了、1996年に宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)に入り、2001年に宇宙飛行士に認定。10年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗、国際宇宙ステーション組み立てに参加した。2011年8月に宇宙航空研究開発機構を退職。著書に「夢をつなぐ」(角川書店)など。

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