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『ハゲタカ』のあと『マグマ』で地熱発電を取り上げた作家・真山仁氏に聞く(上)

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 日本の地熱資源量は、米国、インドネシアに次ぐ約2340万キロワット。地下1500~3000メートルから高温高圧の熱水を取り出し、蒸気でタービンを回して発電する。国内に17カ所あり、出力は計約52万キロワット。東北と九州に集中している。最大は大分県の八丁原発電所(11万キロワット)だ。資源量は原発20基分以上あるが、現在の設備量は1基の半分しかない。資源量の8割が国立・国定公園内にあり開発が厳しく制限されてきたのと、温泉関係者の反対、原発とのバッティングが主な理由だ。だが、原発事故を受けて雲行きが変わった。環境省は昨年3月、特別保護地区と第1種特別地域以外の開発規制を緩和、固定価格買い取り制度の対象(1キロワット27・3~42円)にもなった。

 現在の地熱発電ラッシュは、戦後の電力不足、1970年代の石油ショック後に続く、3度目のブームと言われる。今度こそ日本の基幹電源として根付くのか。2006年に地熱発電をテーマにした小説『マグマ』、今年3月に新書『地熱が日本を救う』を出した作家、真山仁氏に聞いた。

 ――福島原発事故後、2006年に書かれた地熱発電をテーマにした小説『マグマ』が話題になりました。何がきっかけですか?

真山仁氏拡大真山仁氏

 真山 『ハゲタカ』のあと、エネルギーをテーマに小説を書きたいというのが、まず先にありました。とても大切なものでありながら、この国では自給率が低く、非常に無頓着です。ちょうどピークオイルが言われていた時期でもあり、最初は石油を考えていました。
 父親が地熱関係という友人から「父が『地熱発電っていいもので、資源がたくさんあるのに、なかなかうまくいかない』と言っていた」という話を聞きました。地熱開発は2000年代、ほとんど開店休業状態で、すでに稼働しているところのメンテナンスをしているぐらいが関の山でした。

 私のような小説を書くときに大事なのは、実現できそうでできない、何かが立ちはだかっているというのが、物語としておもしろいわけです。もしかしたらおもしろい話なのかなと思って話を聞きにいったら、地熱にまつわる歴史、技術、なぜ地熱がダメになったかという話を、3~4時間レクチャーしてくれたのです。

 驚きました。私は関西出身で読売新聞時代は中部本社(名古屋市)だったので、地熱発電を知らないんですよ。関西電力や中部電力の管内では地熱発電をやっていませんから。日本は資源がない国と聞いてきたが、地熱資源は足元に眠っていた。ポテンシャルにすると、原発20基分以上もあるという。

 うまく行かない理由は、国立・国定公園の規制、温泉組合の反対、小規模であることなど。オイルショック後は、原発と競うように開発していた。でも、小さくても40万~50万キロワットの原発と比べて、地熱は最大でも11万キロワット程度。莫大な国家予算を投入してきた割に、国内の地熱発電を全部合わせて美浜原発の1基分ぐらいの発電量しかない。過去には開発に伴うに利権食いもありました。

 それでも、地球温暖化やピークオイル、原発の問題を考えると、もう少し生かすべきではないか。エネルギーは買えばいいんだという発想に警鐘を鳴らすには、地熱発電はいいんじゃないかと思った。実を言うと、 ・・・ログインして読む
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筆者

石井徹

石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。

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