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『ハゲタカ』のあと『マグマ』で地熱発電を取り上げた作家・真山仁氏に聞く(下)

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 作家・真山仁氏のインタビューを続ける。

 ――今年になって地熱発電に関する新書『地熱が日本を救う』を書きましたね。

真山仁氏拡大真山仁氏
 真山 『ハゲタカ』の後だったこともあって、『マグマ』はそれなりに売れたのですが、それほど注目されたわけではありません。3.11以降にファンの人が「予言していたよね、あれ」と言い出して火が着きました。経産省や環境省にも地熱の専門家がいなかったので、教科書的に読まれ始めた面もあります。多かったのは「小説だからできる話で地熱なんか無理だよね」という感想です。「だって、できるんだったら、とっくにやってるだろう」と。地熱発電自体をフィクションだと思っている人がすごく多かった。これはちゃんと伝えなくちゃいけないんじゃないかと。それまでも、日本に地熱発電が普及するよう地道に運動してきたので。

 これからはエネルギーの奪い合いが始まる。地球温暖化の問題もある。革新的に発電方法を変えなくてはいけない時期がそう遠からず出て来るだろう。だとしたら、代替エネルギー、特にベースロードを担える発電方法をもっと普及させなければいけない。小説家は小説だけで言いたいことを言うべきだと思っていますが、地熱の話だけはいくらでもインタビューに応じて、講演にも行った。大学の一般教養で『マグマ』を教科書にしてくれたので、授業にも行った。一人で旗を振っていました。

 地熱が再び注目された2011年秋、超党派の国会議員による地熱促進議連ができて講演に呼ばれた。みんなから「『マグマ』を読んでいる」と言われました。「この通りでいいのか」とも聞かれた。小説以外は出さないつもりでしたが、事実だけを集めたわかりやすい新書を書こうと思いました。だれかが、ちゃんと地熱発電を紹介すべきだと考えたのです。

 ――一般向けの地熱の本はほとんどありませんでした。

 真山 震災後に2冊ぐらいでましたけど、難しかったり、専門的すぎたりして、「何で太陽や風力じゃなくて地熱なのか」についての説明がない。地熱発電のように発電量が一定している電源でない限り、原発の代わりにはならない。太陽や風力は天候次第なので、強力な電池ができなければ、電気の量と質のコントロールは難しい。

 電気については受け身でいいと思っている人がすごく多い。スイッチを入れればつく。停電すれば怒ればいい。落雷して、1時間の停電でも許さない。こんなにうるさいのは日本だけですよ。欧米はしょっちゅう停電する。そこから説明しないと、「なぜ地熱なのか」という議論にならない。

 ――原発事故以降、3度目の地熱ブームと言われますが、日本に地熱は根付くと思いますか。

現在の主な地熱発電の開発地点拡大新たな地熱発電の開発は全国24ヵ所。北海道、東北、九州に集中しており、秋田県湯沢市や福島県などの開発地点は、国立・国定公園内にある。
 真山 当初はうまく行くと思ったんですよ。超党派による地熱議連ができた時には、経産省で原発を推進していた人までが旗を振っていた。国にとって大事なのは、何で発電するかより、必要な電気を供給できるかどうかだ、と思った。

 ところが、いざ動き始めると、

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筆者

石井徹

石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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