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新型インフルエンザワクチンでナルコレプシー発症が増えたフィンランドの教訓

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 子宮頸がんワクチンの接種後に学校生活に支障が出た女子生徒が昨年度171人いたことが文部科学省の調査で明らかになった。「足に力が入らず歩行困難」「関節痛で入院」などの理由で学校を30日以上休んだ生徒が51人いる。この夏、ヘルシンキで開かれた科学ジャーナリスト世界会議に参加して、フィンランドでは2009年の新型インフルエンザの世界的流行時にいち早くワクチンを導入し、翌年、子どもたちのナルコレプシーが増えるという事態に見舞われたことを知った。稀な副作用は、ワクチンが広く使われた後でなければ見えてこない。そして、それまで知られていない副作用は、知られていなかったが故に医学界になかなか受け入れられない。それが3年前のフィンランドで起きたことだ。今春、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が結成された日本は、フィンランドの経験を知り、教訓に学ぶべきだと思う。

 「過眠症」と呼ばれる睡眠障害の代表的なものがナルコレプシーだ。昼間に眠気の発作が起きて居眠りしてしまったり、感情が高まると体の力が抜ける脱力発作が起きたりする。中学生が発症のピークと言われる。日本では比較的患者が多いが、欧州ではきわめて稀な病気だ。

 09年に新型インフルエンザが流行したときを思い出そう。メキシコと米国で人から人にうつる豚インフルエンザウイルス(H1N1)が確認され、日本では5月にカナダから帰国した男性3人に感染が判明した。厚労省によると、日本の流行ピークは11月下旬で、受診者(7月~10年3月)は2000万人強、感染がわかってから亡くなったのは198人だった。

 当時は世界中のメディアが、パンデミック(世界的な大流行)がどれほど怖いか盛んに報道した。フィンランドでは「国内で6000人が死ぬ」という見出しが躍った。

 世界保健機関(WHO)は09年秋にワクチン接種を推奨。フィンランドはその冬、

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