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「イプシロン」を長距離弾道ミサイルに直結させるのは言いがかりだ

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 新型ロケット「イプシロン」は14日に打ち上げられることになった。今度こそうまくいくことを祈りたいが、関連した議論で気になったことがある。それはイプシロンの技術が長距離弾道ミサイル技術に転用できるという理由から、開発そのものを懸念する意見の存在である。人工衛星による地球・太陽系研究という、ロケット技術に直結する仕事をしている者として、この意見の問題点を記し、それが誤解と偏見による言いがかりに過ぎないことを示したい。

 先ず第一に、ロケットの種類に関係なくその技術と弾道ミサイルの技術には共通要素が極めて多い。というのも、米ロを始めとするほとんどの宇宙開発国で、弾道ミサイル技術の延長としてロケット技術が開発された歴史があるからだ。国産技術のみで人工衛星の打ち上げに成功した「宇宙クラブ」は、日本を除けばことごとく弾道ミサイル開発と宇宙開発を組み合わせている。となれば議論すべきなのは、ロケット・ミサイル技術を平和利用してきたか、それとも軍事利用してきたか、という実積だ。刃物で例えれば、それを料理等に使ったか、殺傷等に使ったかが問われるのである。

人工衛星の初打ち上げの歴史。人工衛星を打ち上げることはロケット技術の一里塚であり、これを達成した国を俗に「宇宙クラブ」と呼ぶことがある。韓国は完全に国産ではない。

 その意味では、日本だけが、平和目的でロケットを開発し、にもかかわらず弾道ミサイルの開発をしなかったという希有の歴史を持っているのだ。日本以外で唯一、人工衛星の初打ち上げを研究ロケットの延長として成功させたインドすら、弾道ミサイルの開発を平行して行ない、人工衛星打ち上げ後に技術を転用している。平和目的の開発しかしたことのない欧州宇宙機構(ESA)も、フランスとイギリスのロケット技術が基礎であって、その元はミサイル技術である。日本だけが一貫して平和利用に徹しているのだ。

 日本の特色はそれだけではない。初めての

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